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はいずる翼 39

「オメガに?」 「ええ、オメガに」  どこか演劇のセリフめいたやりとりをする姿は、誰がどう見ても大根だろう。 「オメガなんかにねぇ」  そう言いながらも男の腰は耐えきれなかったとでも言いたげにぐいぐいと押し付けられている。 「ほらほら、『なんか』なんて言葉を使うと、こわぁい神さまが怒りにきますよ」  笑いを含ませた言葉は、臭い演技をしている最中でも腰を動かしている男をからかっているようだった。   「っ  もともとオメガを保護とか言ってる方がおかしいんだ。見てくださいよ、このオメガだって、あれだけされたのにまだ欲しがってる」  乱暴な手つきで尻の肉を引っ張るから、ちんぽが突っ込まれているところが広がって隙間からぶちゅりと愛液と精液が混ざったものが噴き出す。  随分と遠慮なしに出してくれたものだ と冷えた頭の片隅で考えながら、人の体を弄ぶのに夢中になっているこの男達はオレが人間の言葉を理解しているとわかっているのか甚だ疑問だった。 「セックスのための生き物ですからね、もしかしたらもっと人数がいないと満足しないのかもしれません」  酷く真面目腐った顔で言うが、口の中も鼻の奥も……腹の中だって、こいつらの出した精液で満たされているせいか嫌な臭いがする。  これだけ人を好き勝手にしておきながら、自分達は高みにいるのだと言わんばかりの態度に反吐が出そうだ。 「高倉さまも、お客さまも、お話しばっかりで楽しいん?」  指先で客の項垂れた股間をつつ……と弄ってやりながら笑ってやると、男達の注意がこちらを向いたのがわかった。    腰の痙攣するかのような動きと共に下着の中に吐き出された精液は、むっと鼻を突くような異臭がした。 「  ひ、 」  じわじわと下着に沁み込んでいく生暖かな液体に悲鳴を上げると、オレを壁に押し付けていた痴漢の手が労わるようによしよしと頭を撫でてくる。  その度に……べとりとしたものが髪に擦りつけられて…… 「  っ」 「あぁ、気持ちいい。君はー……やっぱりナカじゃないとイケないのかな?」  下着の中を手が弄って、白濁の液をすくうように動く。  短く爪が切られた丸い指先を自分自身の出したもので汚し、男はどこか満足そうな気配だ。 「ほら、アルファのおちんぽミルクだ」  ぬとりとした青臭くて、悪寒を誘うような存在が唇に塗りたくられて……いっそ気を失ってしまえたら楽になれると願いながら、震える頭を逸らした。 「上手に舐め舐めしてごらん?」 「  っ」  指先にわずかに力が籠ると唇が歪んで……  

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