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はいずる翼 45
でもそれが嬉しくってくすぐったくって、一心不乱に自分を求めてくる和歌に胸がきゅうと絞られる。
尋ねたいことは幾らでもあった、けれどこの腕の中に居るとどんなことでも些細なことだって思えてしまって、避けられたことや若菜と親しくしていたことはあっさりと忘れてしまえた。
「 っん、ぁ、ぇ か」
「 」
触れられたことが嬉しくて嬉しくて……
まるで全速力で走ったように呼吸を荒げている和歌の様子に、オレは気づけなかった。
「あっ ぃっ」
ガチン と音がして肩に痛みが走る。
荒く息を吐きながら和歌が食むように首筋に唇を落としていた直後のことだった。
薄いシャツ越しに和歌の歯が食い込んで、肉が少ないからかゴリ……と音を立てる。
「 っ⁉」
痛みで体が逃げを打とうとしたけれど力強い腕がそれを許してはくれない。
涙が出そうな痛みだったけれど、そういうことをよく知らないオレはもしかしたらこれも愛情表現なんじゃないかって思ってぐっと口を引き結んだ。
「若葉……お前、ネックガード は?」
「ネ……? 首輪? そんなん誰もせぇへんよ! オメガやってバレてまうやん! ……やから、持ってもないし 」
「 っ」
オレの言葉に和歌は明らかに苛立った様子で顔をしかめ、キスして体を弄って……甘い瞬間のはずだったのに、オレを見る……いや睨みつける表情は険しいものだった。
はぁ はぁ と荒くなっていく和歌の呼吸と食いしばる口元から垂れる唾液とそこに混じる赤いものに、オレはまた何かやらかしたんだってわかる。
でも何が悪かったのかわからなかった。
場所が悪かったのか、それともキスがへたくそだったからか……もしくは、オレがあんな目に遭うような悪い子だからか?
思い至ってしまうと自分が綺麗じゃないことにぞわりとした嫌悪感が湧く。
自分が触れてしまったことでその汚れが和歌にまで移ってしまうんじゃないかって思うと、急に恐ろしくなって腕を突っぱねた。
「 っ、おい! 何を 」
「あ、あかんかった! あかんの! オレに触ったらあかんっ!」
足元は溜まっていくお湯で満たされていて、突然突っぱねられて和歌はふらつくように壁に手を突いた。
「ごめ ごめん、おしまいっ もうこれで、おしまい。オレ、帰る!」
壁に寄り掛かる和歌に手を貸そうか迷ったけれど、それすらも和歌に汚れを移してしまうと思うとそれもできない。
オレは手を肩まで上げて、少しでも触れないようにしてそろりと湯船から出ようとした……
「 ────っ」
背後から伸びた手がぎゅっと体を押さえつける。
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