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はいずる翼 71

 もしかしたら最初は体の調子を聞いたり、商売の調子を聞いたり……様々なことを尋ねていたのかもしれない。  でも送る段になって読み返して、きっと大慌てで消してまた考え直して……  きっとそうしてる。  確信がある。  きっとわたわたしながら、あの可愛らしい顔の眉間に皺を寄せて打ったんだろう。 「  そっちに行く」  そう返事だけをして、ホテルでシャワーを浴びたけれどもう一度丁寧に体を洗う。  ミクは番がいたから他のフェロモンは一切わからないのは承知してはいるが、オレ自身が他の人間の臭いをつけて会うのに耐えられなかった。  ミクを裏切って、行った先の客は小便を飲みたがる変態で……首まで絞めてくるような客だった。  そんな奴らの気配を、ミクに感じ取って欲しくないから……    タクシーでミクの送ってくれた住所に向かう。  だんだん店の明かりが無くなって、閑静な住宅地になって……更に街灯が少なくなってくる頃、「着きましたよ」と運転手が声をかけて来た。  その顔は……ちょっとだけ人のことを幽霊じゃないのかって疑っているような顔だ。  オレはそそくさと代金を払って車から降りて……萱が風に揺れる周りを見渡す。 「え……っと?」  もっと住所がどんなところか調べてからくるべきだったかと、遠くの街灯を見て思う。   「あ! みなちゃん」    ぱっと目に明かりが飛び込んできて、眩しい! と思った途端、ミクの声が響く。  少しおっとりとしたような……ふわふわしたような口調に、もしやと思って尋ねる。   「自然が多くてびっくりですよね」 「いや、それより……ミクちゃん、もしかして今からヒートなんか?」  Ωのヒートがずれるのはよくあることで……もしそうならオレは約束を守ることができる! 「ううん。もう終わり、です。明日の朝くらいまでな感じです」  困ったように笑われて、オレはあからさまにがっかりとした表情を表に出すことができなかった。  それでも、聞いていた予定日よりは一日ずれているから、こうして発情期間に会うことができた。 「  っ、ご  」  ごめん は簡単すぎて、でもすみませんも申し訳ございませんもミクは受け取ってくれなさそうだ。 「約束を破って……悪いことしたん…………ごめ んなさ い」  小さな子供でももう少し素直に謝れただろうに。  オレの不器用な謝罪に、ミクは怒らずにくすくすと可愛らしく笑い返してくれた。 「それでね、……疲れてるってわかってるから、断ってもらっても、全然……大丈夫なんです、けど。あの、今夜ベッドで一緒に寝てくれませんか?」  きつく握られた拳が震えて、今ミクが勇気を振り絞っている。  

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