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はいずる翼 106

 長い時間をかけてやっと見つけて、オレに連絡してきたんだろう。  そうに違いない。 「ぁ  はは! あえか……やっぱり和歌はオレを捨てたりなんかしてなかったんや!」  捨てて、忘れて、どこかで暮らしているかも なんて馬鹿なことを考えてしまった自分はやっぱりダメ人間なんだろう!  和歌の名前を聞いた耳がぞわりぞわり震えて、心臓が生き生きし始めたのがわかる。  死んでいた体が生気を取り戻したような、心が震えて……飛べてしまいそうなほどの多幸感に自然と笑顔になっていく。 「和歌は、なんて⁉」  勢いよくデスクに飛びついたせいか、小金井がけたたましい音を立てて後ろに飛びのいた。  髪が邪魔でわからないオレを見る目は……? 「小金井?」 「あ、ああ、これを」  デスクの引き出しから取り出した一枚の封筒に特別な部分はない。  変哲もない事務的な白い封筒なのに……体が震えた。  どうしてそれがわかったのかは自分自身もわからない、けれどそれが和歌から送られてきたものだと確信が持ててしまった。  奪うように小金井から受け取りたかったのに、震えた手ではうまくいかない。  取り落としそうになる度に心臓が跳ねてどうしようもなくて、最終的には抱き込むように胸にぴたりと押し付ける形で収める。 「ここで読んでいったら?」 「あ……ぅ、うん」  家まで持って帰って、その間に落としたら と思っていたタイミングだっただけに、小金井の提案に素直に乗ってソファーへと腰を下ろす。  痺れたような手は小刻みに震え続けていて、どうしたらいいのかわからなかった。  封だけがされた白い封筒。  開けるという行為でそれを傷つけてしまうのが嫌で、なんとか封筒を開けずにこの中身を取り出すすべを探して……結局、小金井にカッターナイフを差し出されて渋々それを使う。  できるだけ最小に、可能な限り綺麗に開けようとしたのに、震えた手では端がうまく切れずに歪んでしまった。 「……っ」  やはり自分は何をさせてもダメなんだと 和歌に申し訳なく思いながら、中から便箋……というよりもメモに近いものを取り出す。  それだけで胸が詰まって、視界が揺れ始める。  涙で汚しては と必死に堪えるのに、耐えきれなかった雫が頬を転がり落ちてしまう。 「  ゃ、汚れるんいややっ」  慌てて袖で拭い、両目を乱暴に擦る。  そんなオレの目に飛び込んできたのは、 『大神の傍に、しずるがいる』  走り書きのそれは、その一文以外何も書かれてはいない。  久しぶりや体を気遣う一言すらないのに、ただただ……それが嬉しかった。

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