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落ち穂拾い的な 覚えていない1

 Ωの人生なんて決まっている。  よければα、悪ければβか無性の人間たちのオモチャになる、それだけの人生だ。  母もそうだったし、祖母も田舎の風習に則って村の慰み者となっていたと、認知症が進んだ際に零していた。  だから、母や祖母、もしくはさらにその前の祖先たちΩが進んできた道を、オレも進むと……それだけの話だ。  それでもオレは発情期が訪れるのが遅かったからか、十八歳を超えるまではのんびりと過ごせた。けれどその分、やってきた発情は不安定できつく、街中だろうとどこだろうと突然フェロモンを振りまく体質になってしまった。  そんなΩに、平穏な日々なんて来ない。 「  っ、あぁっ」  どん と突き飛ばされて路地裏に倒れ込む。  足を挫いてしまって、もうこれ以上逃げられないのだから路地裏で倒れたのは幸いだったのかもしれない。 「へへ  こんなところがいいの?」 「そこのホテルでもよかったのになぁ」  ぞろ と自分の背後から数人の足音が響いて……表通りでさんざん自分を追いかけまわした連中が集結しているんだとわかった。  怯えながらアパートで暮らしていたけれど、それだけじゃ生きていけない。だからアルバイトをするために意を決して外に出たのだが……  久しぶりの外というのがきっかけだったのかもしれない。  自分の体からフェロモンが垂れ流されていると気づいたのは、電車で後ろに立った男が粗い息遣いで体を押し付けて来た時だ。  こちらの許可を得ないまま体中を弄り始めた痴漢に、抵抗するために感情を高ぶらせればそれはそのままフェロモンをまき散らす結果になり……  同じ車両に乗っていた男達が自分を犯そうと口角に泡を飛ばす勢いで何事かを言いながら、襲い掛かってきた。  何とか駅から逃げることはできたけれど、Ωの体力ではもうこれ以上は無理だった。  死ぬ気で……といっても死ぬわけではないのに、足はもう限界でこれ以上は…… 「  っ」  倒れた場所が表通りだったら何かが違っただろうか?  周りの人は助けてくれただろうか?  いや……写真を撮られてネットに流されるか、もしくは自分を輪姦する人数が増えるだけだ。 「ゃ、やめ  っ自分は  っ嫌です! 拒否 します!」  いつも言われる、Ωが誘ったからこんなことになったんんだ の言葉を言わせないために、自分はできる限りの大きな声で自分に性交の意思はないのだと宣言する。  そうすると、瞳孔を開いてギラギラして見える男達が顔を見合わせて笑い始めた。 「あ はは! お前ら、何か聞こえたか?」 「聞こえた! 『あーん! ボクのケツアナをバガバにしてぇ~』って」 「ええー⁉ 違うだろ、『みな様、淫乱なオメガでゆるま〇こですが、しっかり種付けしてください』だろ」 「『おち〇ぽおち〇ぽ! 美味しそう!』だって」    

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