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落ち穂拾い的な 間に合わなかった2

 この場で自分が一番役立たずなのは百も承知だ。  けれども血の塊のようなものにうっとりとしている高橋よりはマシだった。 「わ 若葉は   」  まるで宝物を扱うように塊を看護師に渡す高橋に尋ねると、高橋はきょとんとした顔をする。  そこにあるのはいつもの人を馬鹿にしたような表情ではなく…… 「アレはもう使いモノにならないが? 胎宮がズタズタで、もう役に立たない」  使い終えた道具を見るような目は、決して人に向けていいものではなかった。  若葉のことを問いかけた俺がまるで悪いかのように目を眇めると、さっと保育器と共に部屋を出て行く。 「……ぉい、おいっ!」  上げた悲鳴のような声は高橋を呼び止める効果はなく、看護師にぐいと押されてたたらを踏んだ。  俺が押し出されると同時に駆け込んできた医者は一瞬入り口で立ちすくんで……言葉はなかったけれどその医者が息を飲んだ空気でわかる。  それは言葉で語るより雄弁だった。  若葉と共に逃亡してから常に腹の底にあった黒く冷たい感覚が這い出して、体中を弄るような感覚がする。  膝から崩れ落ちそうな、けれどすべてを壊してしまいたいような衝動が…… 「わか  っ若葉っ!」  病室の扉に拳を打ち付ける俺を後ろから伸びた手がはがしにかかる。  いつの間に呼ばれたのか警備員たちが俺を引き倒し押さえつけ、引きずるようにして連れていく。  もがいて伸ばした手は空振り、数人がかりで手も足も押さえつけられて抵抗なんてあってないものだった。  最後記憶は首に腕が回った瞬間だった。  締め落とされたのだ と気づいた瞬間飛び上がったが、体ががくんと何かに引っ張られて無様に床に倒れ込む。  鋭い肩の痛みと、それから口の中の血の味。  咥内の固まった血を吐き出すと、右顎が酷く痛んで再び濃い血の臭いが漂う。  舌で触れた先は唐突に歯が途切れていて、そこにぽっかりと間が空いているのだと俺に教えた。 「  っ」  左腕を見ると配管と手錠で繋がれている。  引っ張って見ても手錠も配管もそれではびくともしないほど頑丈だ。 「は  っ……わ、か  」  若葉 と言おうとすると喉へと血が流れ込んで息を詰まらせる。  噎せ込みながら懸命に左腕に力を入れて……けれど人を拘束するための道具は少しも緩む気配はしなかった。  それでもぎ ぎ と歯を食いしばりながら左手に力を込めていく。  へつられた皮膚が痛みを訴えたが、それを無視して更に力を込め……本能がやめろという言葉を無視して足で蹴りつけるようにして力を入れる。  伸びた皮膚の下で、聞いたこともないような鈍い音がしたのはその時だった。  

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