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壁の中のラプンツェル2

   別段、マンネリというわけではない。  挿入しないという部分を除けば普段の大神との時間に何も文句はない……けれど、セキはその唯一の部分が不服だった。 「人権無視のオナホでいいですからぁ! 奥のぐぽってイクところまで一気にイっちゃってくださいよぅ!」 「ヒートでもないのに入るわけがないだろう」  髪が濡れて額に垂れ、いつもより幾分柔らかく見える姿で大神は寝室に入ると呆れたように答える。 「う……ま、毎日っちゃんと解して拡張してんですから、もうそろそろ入りますよぅ」  セキはぷうと頬を膨らませて言うが、その声は小さく呻き声に近い。  悔しい感情が滲んでいるのは、以前にチャレンジして入らなかったからだ。  いつ、どうやって鍛えているのか不思議に思えてしまう盛り上がった筋肉に、誰よりも高い身長、そしてそれに似合ったサイズの股間のモノに……セキは不服そうにつんと唇を尖らせる。  大神が大きすぎるのが悪い と、思いつつもそれがいいのだから文句も言えない。   「力入れて突っ込んだら  」 「入らない」  取り付く島もないほどはっきりと返し、大神はパネルに手を置いた。  力を込めるとたわむが壊れそうにはない、けれど構造に特別な仕掛けがあるという様子ではなく、ただ板にセキが刺さっているだけのようだ。 「遊んでないでベッドに入れ。寝るぞ」 「あ、えーっと……実はコレ、えっちしないと抜けられない壁なんで  ────って、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ! 引っ張り出してくださぁい! そろそろ……この体勢辛いです……」  大神とのセックスに耐えれるようにと、特に頑丈に作ってくれと直江に注文を出していた。  その甲斐あってちょっとやそっとじゃ揺らがないものになったが、それは同時にしっかり固定され過ぎて壁から出るのが容易ではないということでもあった。  ジタバタと暴れてはみるものの、セキはそこから抜け出せない。 「ひぃん……下ろしてぇ」 「はぁ」  煙草を咥えていれば誤魔化せた溜息が漏れる。  大神はセキの腕を掴み、膂力に任せて一気に引き抜いた。  他の人間だったなら手をこまねくような状態だったかもしれないが、大神にかかれば容易いことだ。  引っ張り出されたセキはその勢いのまま大神の首にしがみつき、ちゅう とわざと大きな音を立ててキスをする。 「ありがとうございます! 大神さん、おかえりなさい!」 「……ああ」  首にぶら下がったまま、セキはちゅう ちゅう と角度を変えて口づけを繰り返す。 「ん? なんか体冷たくないですか?」

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