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壁の中のラプンツェル3

 髪から滴る雫も体もどこかひんやりとしている。  セキはシャワーだからかと考えたが、そうだとしてもいつもはもっと温かいはず……   「水被りました?」 「そんな必要あるか?」  質問に質問で返されたが、セキはにま と笑って「そういうことにしておきます」と答える。 「お前の体の方が冷えている」 「あー……ずっとスタンバイしてたんですもん」  直江からいつ帰宅するかの報せはもらっていたが必ずではない。  全裸前屈体勢でじっとしていたせいか、触れるとひやりとするほどセキの体は冷え切っていた。 「あっためてくれます?」    セキは自分を抱える腕にこてんと頭を預けると、寒かったんです と甘えるように言う。  触れ合って、じわりと熱が戻り始めた部分は温かかったが、それ以外はまだひやりとしたままで……   「さっさと寝ろ。風邪をひく」  ベッドへぽいと投げ込むと、セキが体勢を整える前に掛け布団を投げつける。  重さがあるのかと疑うほどの掛け布団は重くなかったが、セキはジタバタと暴れるようにそれと取っ組み合う。 「お互い体冷えてるんですから! 温めてから寝ましょうよ!」  ぷは と布団から顔を出した時には、大神はすでに書類を持ってベッドヘッドにもたれかかった状態だった。  大神の見た目を裏切り寸暇を惜しんで働き続ける姿に、セキはむっと唇を曲げた。  深夜も回ろうという時間にやっと帰宅して、自分がいるのにここから更に働くのは、いろいろな意味であり得ないことだ と頬を膨らませる。 「大神さんっ! ベッドは休むための場所ですっ! 休まないと仕事の質も下がりますよっ!」  きつめにつん と言って書類に手を伸ばそうとしたが、あっさりと躱されてセキは大神の上へと倒れ込んだ。  はっきりと凹凸がわかるほど発達した筋肉と滑らかな肌、男らしい粗い匂いがして……セキはきゅっと焦れた腹の奥の感触に身を捩る。 「オレ、が、隣にいるんですよ?」  セキの恰好は壁に刺さっていた時のまま、武骨なネックガード以外は一糸も纏っていない。  透明感のある白い肌の向こうから滲むように広がる血色と、しなやかに誘いかけてくるかのような色気があった。  シミ一つない体に散る、強弱のある赤い斑点を目で追いかけてから、大神は何事もなかったように書類に視線を戻す。 「明日までに確認しておく必要がある」 「じゃあ、五分……十分だけ待ちます!」  そう言うとセキはペタン と大神の胸に頬をつけるようにして体を落ち着かせる。  飛びついた時は冷たかったのに、そうやっているとじわり汗ばむくらいには温かくなってきて……セキは大神が片手で書類を、もう片方の手で自分の肩を抱いてくれていることににまにまと笑いを漏らした。

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