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壁の中のラプンツェル4

 書類の確認していてセキに興味がないような態度を取るくせに、その行動は冷えたセキを温めようと動いている。  肩の上を緩やかに行き来する手に嬉しくなって抱き着く腕に力を込めた。 「あったかいです」 「そうか」    トクトク と触れ合った箇所から聞こえてくる鼓動は人を眠らせようとしているように思えたので、このままでは眠ってしまうと焦ったセキはあくびを噛み殺して頭を上げる。  大神の視線は書類に注がれていて、セキが胸の上でころころと頭を転がしても揺らぐことはなかった。    このままでは仕事が終わる前に眠ってしまうと危機感を覚えたセキは、慌てて顔を上げて……目の前の盛り上がった胸板に乳首を見つけて「!」と考えを閃かせる。  大神の魅力的な胸筋と乳首、セキはそれに向けて吸いつく。 「  ? 何をしている?」 「大神さんの雄っぱいがあんまりにもよい雄っぱいだったから! 吸ってみました!」 「なんだそれは」  セキの言葉に、壁に突き刺さった尻を見た時と同様、大神はどこか動揺を押し隠せていない。 「オレの全舌技を以って、もっと可愛い良い雄っぱいにしよ   ぶっ」  書類でぺちりと口を叩かれて、セキは言葉を途中でやめなくてはならなかった。 「くだらないことを考えているなら寝ろ」 「大神さんとえっちなことしたいですっ!」  ピクリ と書類の端が動いたけれど、大神はそれ以上手を動かさない。  そして視線は紙の上に留まっていたが動いている気配はなかった。 「……大神さん、オレ……抑制剤飲むの止めてもいいですか?」  爪をぷちん と弾きながらそろりと尋ねる様子は、いつものとりあえず当たって砕けてから考えよう! みたいな姿は欠片もない。  それだけ、Ωが抑制剤を飲まないでいることは禁忌に近かった。 「馬鹿なことを言うな」 「だって……」    今のセキは、体に合った抑制剤を処方してもらっているために平均的な周期である三カ月に一度発情期が来る。  その抑制剤を飲まなくなった場合、一カ月に一度のペースで発情期が来る予定だ。  一週間ほどの発情期の間、Ωは理性を飛ばして獣のようにαを欲しがり誘う。  そんな姿のせいでΩは随分と社会的な地位は低く……繁殖のための性別と言われ続けていた。  Ωであるセキが、気が狂いそうになる性衝動を知らないはずがない。   「オレ、三カ月に一度じゃ嫌です」  小さなΩは覚悟を込めた声音でそう言い、しっかりと大神の目を見る。  セキはΩとしては標準だと言って差し支えなかった。  つまりそれは男性の中では背が低めで筋力がつきにくいほっそりとした体をしていて、顔の造りが華やかで美しく守りたくなるようなたおやかさがある。

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