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雪虫5 6

「さーらさらの綺麗な髪やね」  うたの髪は真っ直ぐすぎて若葉がリボンで結ぼうとしてもするすると逃げていく。  以前、髪の質はその人間の性格を表す なんて言葉を聞いたことがあるから、それをそのまま鵜呑みにするとうたは随分と真っ直ぐらしい。  けれどそれは結びにくさにも繋がるようで、若葉の口がどんどんどんどんへの字に曲がってく。 「よし!」    若葉が難しい顔をしながら緩く作った三つ編み姿はいつもの見慣れた雰囲気ではなかったけれど、今日の服装によく合う髪型だった。 「どや! 可愛いやろ!」 「あー……うん。ピン? とかも、いいなって思う」  シンプルな真珠がついただけの髪留めは、白か水色なら雪虫にも似合いそうだ。  金属でできたものは肌がかぶれるから使うことはできないけれど、雪虫でも使えそうな素材のものを探してみるのもいいかもしれない。  玉が連なっているのもいいし、大きなひと粒もよく似合うだろう。  いいものがなかったら海で真珠を採ってきて自分で作ればいいだけだ。  ちょっと探すのが大変かもしれないけれど、真珠をつけた雪虫は可愛いだろう。 「ナニでれでれしとん? うたが可愛なってびっくりした?」 「はっ⁉ ち っ」  違う! と言い切ってしまうとうたに失礼だし、番のことを思ってニヤニヤしてるのも気恥ずかしくて、結局もごもごと口の中で言葉をこねて終わらせる。 「ハンカチ、ティッシュは持ったん? 門限までには帰ってくるんやで?」 「なんだよそれ、お   」  親面すんな はさすがに言っちゃいけないだろう。  反抗するような時期は過ぎたけれど大人しく受け入れられるような年でもなくて、やっぱりさっきのようにもごもごと口の中で言葉を潰した。 「お土産買ってくるよ、だよね?」  オレの言葉を上手く拾って話を繋いだうたに、若葉は柔らかく微笑んだ。  初めて会った時とは違う、少し荒れた手でぽんぽんとオレ達の背を叩いて、「いい子」と嬉しそうに言って押し出す。 「いってらっしゃい、気をつけてな」  ここでもう一度言い返すこともできたけど、自分の身を案じて言ってくれたんだって思って、素直に「いってきます」とだけ返事をした。  どちらかというと服は飾り気よりも肌触り派だ。  オレ自身の服も、雪虫が持って行ってしまうことも多いから同じように肌触りが最優先事項だったりする。 「あー……うん、それでいいんじゃない?」  だから、うたがこっちとこっちどっちがいい? と聞いてきても色が違うな とか、動くのに邪魔そう という感想しか持てない。  そもそも服に頓着のない人間に服を選ばそうとしているうたが間違ってるだろ⁉  

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