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雪虫5 7
幾らオレが破っちゃった服の弁償だって言っても、選ぶことまでさせる必要はないと思う!
買ってきた服のお金払うんじゃダメなのかよ……
「よく見て! こっちの赤と白のストライプが入ってる部分がすごく可愛いんだけど、でも全体の雰囲気を見るとこっちの紫色の方が可愛いでしょ? でもこれよりはブラウンのこっちが使いやすくていいかなって思ったりもするんだけど……」
うたの説明を聞き流しながら、傍らにかけられていた服を手に取る。
布がふんだんに使われているから仕方がないのだけれど、少し重く感じた。オレでもそう思うってことは、雪虫が着たら重さで体調を崩してしまうってことだ。
可愛いかどうかはわからなかったが、白いレースが幾重にもかかる服はレディースだったが雪虫の方が似合いそうだ。
着せてみたいという欲求はあるけれど……それはうたにじゃなくて雪虫にだ。
その雪虫が着れない以上、オレはうたが目をキラキラさせながら選ぶ服に興味はなかった。ただ、服を破いてしまった責任って奴で付き合っているだけで……
「お。これなんか……カワイイな」
つい言葉が漏れたのはウサギの小さなぬいぐるみのついた白いリボンだ。
ウサギの部分がクリップになっているらしく、そこはプラスチックでできている。
これなら雪虫も身につけられるし、何より白いウサギが雪虫にどことなく似ていて好感が持てたから、土産に買って帰ることにした。
「こっちも、可愛くない?」
「ん? なに?」
同じ並びに置かれているのはクロネコのぬいぐるみがついたリボンだ。
さっきのウサギのリボンと違って全体的に真っ黒だった。
「かわ いい? けど、雪虫のイメージじゃないなぁ」
「じゃ、じゃあ……誰のイメージ?」
「んー……セキだな。猫っぽいイメージあるかも」
そう言うとうたはぱちり と目を瞬いてから、少しむっとしたようだ。
「ふぅん」
「なに……なんだよ」
さっきまで機嫌よく服を選んでいたのに突然不機嫌になられてオレは戸惑うしかない。
「ちょ いきなりすぎるだろ」
ここに瀬能がいたら乙女心となんとやらだねぇとのんきに言うかもしれないが、オレは瀬能みたいに対応なんてできない。つんとした雰囲気にこちらもつん と返して……
「ほら、服決まっただろ。レジに持ってくから」
「 ~~~~っ、ない!」
「え⁉」
「気に入ったのなかった!」
「はぁ⁉」
さっきまでどれも素敵と言いながら次々に体に当てて鏡を覗き込んでいたのに、突然気に入らないってどういうことだ⁉
この店も、うたがよく通っているところだと言うからきたのに……
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