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雪虫5 9

 だからといってオレはそれをマイナスのイメージで捉えたことはない。  そのすべてが雪虫の傍に居るために必要なことだったからだ、だからうたに息抜きと言われてちょっと不愉快になった。 「オレは別にそれでいいと思ってるよ。雪虫の傍に居られたらそれだけで窮屈さとか苦労とか消えちゃうし」 「だ、だって、しずるはずっと雪虫の面倒みてるし、研究の手伝いもして……全然休んだりしてないじゃない! 私は心配してて……」  オレの今の生活がおかしいのは瀬能に以前注意を受けたからわかっているつもりだ。  休息休憩らしいものがない一日のスケジュールは、きっとαじゃなかったら耐えられないくらいの激務だと思う。  でも、それも雪虫のためだからできることで、番のために行うことに苦は感じない。 「疲れが溜まって、倒れちゃうから  」 「大丈夫、雪虫に癒してもらうし。雪虫の匂い嗅いだらめっちゃ元気になるし」  体……特に下半身方向だったけど、余計なことは言わないでおこう。 「そんなの  」 「それだけ番って大事なんだなって思う」 「 ────っ」  再び感じた言葉を飲み込むような気配は、今までで一番激しかった。 「  あっ」  思わず出た言葉がうたにとってどれほど重い言葉だったのか、オレはよくよく考えるべきだった。  服の上からじゃわからないうたの腹部にある大きな傷は、うたがΩとしての機能を奪われた証拠で、それはΩフェロモンの希薄さに繋がっている。  フェロモンという匂いで惹かれ合うオレ達にとって、それは惹かれる相手や運命を見つけにくいということだ。  きっとそれは他人のオレよりも本人であるうたが一番よくわかっている。  だから安易にそんなことを言うべきじゃなかったんだって……言葉に詰まった。 「 ど うせ、私はっ……だ、誰にも、   」  噛み潰すように「必要とされない」と絞り出した声が耳を打つ。  以前、どうしてうたがオレに腹の傷を見せて自分の身に降りかかった惨劇を話したのかはやっぱりわからないままだったけれど、オレを信頼か……もしくはそれに近い信用があって話してくれたのは確かなはずだ。    でも今オレは、うたの心配をフェロモンを理由に突っぱねてしまった。  誰かが心配してくれるってことが簡単なことではないってことを知っているから、うたの気遣いを無下にしちゃいけないってわかっていなきゃいけないのに。 「そ、そんなことないだろ!」  さっと掴んだ手は雪虫と同じように折れそうなほど細い。  生殖に関する臓器がないからか、うたの体は女性というには直線的過ぎる形をしていて華奢だった。  

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