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雪虫5 33

 大変なんて安易な言葉で括れる状態じゃないのは百も承知だった。  でも、オレの次に親しいセキの状況を赤裸々に話してしまうと…… 「しずる?」  ひたりと心の奥底まで見透かすような両目に見据えられて、ぐっと唇が歪むのがわかった。  食いしばる動きに顔の筋肉が引き攣れて、友人の危機に結局何もできなかった無力さと、その無力さでいつか雪虫を傷つけるんじゃないかって自分本位な考えに泣きそうになる。 「セキ、大変?」 「……ん」  泣いて懺悔して縋りついても、きっと雪虫はいつもの調子で受け入れてくれるだろう。  でもそれで、オレは楽になるだろう、けれど…… 「じゃあ、その時はきちんと向き合ってあげてね?」 「うん?」 「ちゃんと、セキのお話きいて、ちゃんと、お話するの」  小さな手が、いつもオレがするようにぎゅっと手を握って、優しく揉み込んでくる。  力が弱すぎてくすぐったいだけだったけれど、そうするとひんやりとした体温が徐々に高くなっていく。  心地いい。  安堵と幸福が押しつぶされそうだったオレの胸の隙間に入り込んで、じわじわと染み入ってくる。  オレを救う温もりに、ほっと体の力が抜けた。 「……オレ、やっぱり雪虫のこと大好きだ」 「? 雪虫も大好きー!」  まるでオレの言葉がくすぐっているんだとばかりに、雪虫は身を捩ってこそばゆそうに笑い声をあげた。 「だからね、えっとー……セキと仲良くだよ?」 「うん、わかった」  セキと喧嘩でもしたと思われたんだろうか?  少しちぐはぐな会話だったけれど、雪虫がセキと向かい合えと言うのならオレができるのは向かい合うことだけだ。    気持ちの方向が決まるだけで驚くほど軽く感じる心に、やっと呼吸ができた気分だった。   「抱き締めていい?」  距離的には手も繋いでるし近かったけれど、オレは雪虫のもっと近くにいたい。  しっかりと抱え込んで、溶けて混ざって、一緒になって……きっとそのままでいられたらこれ以上ないほどの幸福に浸れるって本能が訴えている。  でも現状、オレ達は個々の人間だ。  だから、少しでも隙間を埋めたくて雪虫の方へ体を傾げた。  そうすると雪虫がオレを受け止めてくれて、頼りない腕の力でしっかりと抱き留めてくれる。 「抱き締めようと思ってたのに」 「雪虫だって、だきしめられるもん」  ふん! と鼻息と共に腕に力を込めたようだけど、柔らかな羽に包まれている心地にしかならない。 「オレも抱き締められるよ?」  腕にすっぽりと雪虫を収めていうと、対抗したからか雪虫の唇がちょっと尖って不服そうだった。 「雪虫だって、だきしめられるし、しずるを守れるもん」  

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