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雪虫5 65

「もう大丈夫だよ。少し腫れてるけど」  本当はまだ痛いけれど、それを隠して目の前で手を開いたり閉じたりしてみせると、雪虫はちょっと安心した様子だった。   「そっか! みなわに、痛い痛いのっておまじないがいいっておそわったんだけど。またこんどね」 「は? 痛いです、とっても痛いです、痛くて泣きそうだからおまじないしてくれないと泣く」 「う、うん?」  唐突に痛い痛いと言い出したオレに困惑していたようだったけれど、大袈裟に痛がるふりをすると雪虫は大慌てでオレの手を取ってくる。  子供騙しのおまじないとはいえ、雪虫がしてくれるのかと思うとドキドキしながら姿勢を正す。 「はーい! 痛いの、痛いの、いっぱいだしちゃおうね」 「⁉」  飛んでけと続くのだとばかり思っていただけに、雪虫がぎゅっと自分の胸にオレの手を押し付けてきた瞬間、頭が真っ白になった。  力が弱いとはいえぎゅっと押し付けられたせいか痛む手と、それから男の、しかも華奢すぎる雪虫の胸の感触とに…… 「へ……へ⁉」  一瞬で顔が赤くなったのを感じる。  雪虫はどこもかしこも不安になるくらい細くって、でも胸はほんの少しだけ他の場所よりもふかっとしてる。  それに包まれ……てはないんだけど、左右から胸を押すせいか服に皺が寄ってそれがぱふぱふしてて。  肉の感触よりも布の感触が勝ってるけど、そこは脳内で補正する、てかできる! 「ぱんぱんにつまってる  えっと、なんか……? ぴゅって、だせだせ」  詰まってる……たぶん、精子とか? 精液とか? もうちょっとやらしい言葉かもしれないって思いつつ、雪虫がそんな言葉を覚えていなくてほっとする。  だって、今でもこれだけの破壊力なんだから…… 「しずる! はな! はな!」 「ん、大丈夫」 「だめだめだめだめ!」  ぼたぼたと生ぬるい液体が鼻から垂れていく感触がするけれど、そんなことどうでもいい。  むしろ血が無くなるまで出ていいからこのままぱふぱふしてて欲しい。   「ティッシュ! ティッシュ!」 「続けて」 「つづけないー!」  雪虫が慌てて体を翻すから胸から手が離れてしまう。  指先から消えた体温を追いかけようとするとぼたぼたと赤いものがベッドの上に垂れて……さすがにそれはまずいので大慌てで鼻を押さえた。  もうオレは、雪虫に触れると自動で鼻血が出る体になっている気がする。 「これ! これで押さえて」 「ごめ  大丈夫だよ」  雪虫を汚したくなくて距離を取り、ティッシュ箱を抱えながら「大丈夫」って繰り返す。 「ベッドも汚しちゃったから、血が止まったら綺麗にするな」 「しなくていいよ、しずるはじっとしてて」  小さな手がオレを押しやってから、掛け布団をえい!と引っ張る。

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