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雪虫5 66
そうすると、布団も空気を読んだのかわずかに動いてみせて……
「雪虫もできるんだよ!」
どやぁと鼻息荒く笑うから、オレは鼻血の流れの強さを感じながらうんうんと頷くしかない。
雪虫は布団と取っ組み合うようにして、オレが血をつけてしまったシーツをはがそうと奮闘している。
普段オレがやっているのを見ているだけだった雪虫は、これが人生初シーツ替えってことだ。
「ぅ、ううっ 」
軽い羽毛布団だけれど、雪虫にとってはそれでも取っ組み合うには重い相手らしく、合間合間に呻き声が漏れている。その声が普段あまり聞かない声音なせいもあって、オレは声が上がるたびにむずむずと胸の奥をくすぐられているような気分になった。
すごく可愛いからずっと見ていたかったけれど……
「鼻血止まったから代わるよ」
「まだすごく出てるけど……」
布団と取っ組み合って顔を赤くしている雪虫が可愛いから、当分鼻血は止まらないと思う。
「大丈夫大丈夫」
雪虫が途中まで剥がしてくれていたから、あとはくるりと丸めるようにして洗濯袋に入れてしまうだけだ。
本当はすぐにでも水洗いしておきたかったけれど、そうしたら持って帰る時に重たくなってしまう。
「むりしないでね、でもがんばって!」
新しいシーツを広げるオレに、傍で頑張るように拳を振り回す。
そんな勢いで振り回して壁にでも当たったら骨折かもしれないって、ハラハラしながら急いでシーツを皺ひとつなくセットして、その上に雪虫を座らせる。
「途中までしてくれていたから助かったよ」
「! 雪虫おやくにたてた?」
「もちろん! 雪虫がいないとベッドのシーツも替えられないし、美味しい食事は作れないし、日本には四季がこなくなって、地球は回ることだってできなくなっちゃうんだから!」
雪虫は意味がわからないからかきょとんと首を傾げてくれた。
「雪虫は可愛くて最高って話」
「さいこー!」
くすぐったそうに言って、にっこりと笑う可愛さに顔面の筋肉がでれでれと弛んでいく。
「しずるも、さいこうだよ」
そっと寄り添うように身をもたれさせてくると、雪虫は頬を赤くして嬉しそうに微笑んでいる。
幸せなんだって顔で、幸せなんだって態度で。
だから、オレは自分が心底幸せで、恵まれているんだって実感する。
「雪虫がいてくれるからね」
傍らに番……しかも運命の番がいてくれているって、どれだけ幸運な話なんだろう?
しかも、喧嘩らしい喧嘩もなくて仲良しだって確率はどれくらいなのか?
こうして隣にいることができるのが、奇跡なんだろうなって。
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