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落ち穂拾い的な ザル警備と防風林
「ほんっっっとうに何度も言いますけど、あのグリーンベルトの公園、犯罪の温床だと思います。思いますじゃないな、温床です!」
海の風を変えぎるために、海岸線にそって長く長く植えられた防風林。
手入れはされているのだろうけれど、伸びに伸びたその様子はただただ鬱蒼としているだけだ。
夏は少し木陰が多めで過ごしやすけれどそれだけで、木々に遮られて大通りから見えない状態のそこは、街中にできた穴だった。
中に入れば遊具に遊歩道にと、少しは公園らしさもあったけれど、正直に言ってしまえばただただ木が鬱蒼としたジャングルだった。
人の目の届かない、死角の多い、人通りの少ない場所。
防風林が防音幕の代わりにもなって、声だって表に届くかどうか怪しい。
「だから、あいつらもそこを狙ってくるんじゃないですかっ! そのまま海に出てしまえばタグのチェックセンサーにも引っかからないですし、監視カメラからも逃げられます」
あまりにもあまりにもなずさんさに、思わずしずるの声も荒くなる。
以前に雪虫が攫われた時にも絡んでいた話で、とにかくあそこはよくない! と叫ぶ。
「なんであんなままになっているんですか?」
「なんでって言われてもねぇ。海がすぐそこだから」
すぐそこ と言っても、研究所からは車で十分ほどだ。
「塩害対策だよ、海風も凄いしね」
「でもそれと手入れしないとか、防犯を放り出したままにしておくのは別の話じゃないですか!」
「まぁねぇ、あそこを散歩していた老人が倒れて誰にも気づいてもらえなかった なんて話もあったからね」
「こっわっ! こーっわっ! 犯罪だけじゃないじゃないですか!」
きゃんきゃんと抗議の声を上げるしずるに瀬能は面倒そうに手を振る。
「僕だってなんとかしたいけどさぁ、あそこって城址の関係で大きく手入れが難しいんだよねぇ」
「城址……あぁ、星のお城ですか」
ほんのりと耳を赤くして言うと、しずるは居心地悪そうに体を揺すった。
「あの城、そんな大きいんですか?」
「堀があるからね、あの城自体はとても珍しい造りになっていて、星形要塞、稜堡式城郭と呼ばれているよね。日本ではここの他に二か所のみ存在していて、さらにこのつかたる市のは外国から 」
しずるは話が長引きそうな気配を感じ取り、さっとカバンを持って立ち上がると「雪虫のところに行かなきゃでした!」と叫んで頭を下げた。
「あれ? そうなの? 時間早くない?」
「早くないです早くないですっ」
「あ、そう? じゃあしかたないね」
ひらりひらりと手を振って見送ってくれる瀬能から逃げるように部屋を飛び出して……しずるは話を逸らされてしまったことに気づいたのだった。
END.
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