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落ち穂拾い的な 素朴な疑問 2

「彼は赤んぼうを抱いていた」  外部からの侵入が困難な塔の上、天井にしか窓がなく、部屋の扉の一つは埋め込まれていて開く役割を果たせず、二つ目の扉は鍵がかけられて開くことはできたが、それが行われることはなかっただろうと推察できる。  人の出入りが極端に拒絶されたそこで、中にいる人物が……子供を産んだ?  子供は人の精子と卵子で作られると知っている以上、そんな状況ではできるものもできないとはっきりとわかる。  しずるは嫌な汗が脇を滑り落ちていくのを感じながら、それでも最後まできちんと話を聞かなければ と、瀬能に向き直った。   「彼って言いましたけど、男性だったんですね」 「そうだね」 「入れられる前に不倫王との間に子供ができていた とかは。週数が全然で誰もきづかなかったとか   」 「幽閉されて数年後って記録にあったからね、難しいんじゃないかな」  じゃあ、その部屋の中にいた彼……多分Ωは、そんな状況下だというのになんらかの形で性交をした と? 「さすがに扉から差し込んでも届かないからね。まぁ、彼自身が彼自身の精子で孕んだんだろうってのが無難な見解かな」 「えっっ……」  なんだか座りの悪くなるような言葉に、自然と顔が歪んでしまうのを感じて、しずるは慌てて首を振って表情を整えた。 「……昔の文献にもあってね、国堕つる なれば おめがの君に委ねる 無垢な貴き血の流れ ってね」 「じゃあ……オメガが自分で自分の子を妊娠して……?」 「うん、余計な市井の血を入れずに復興のその時まで血統を守りなさいって」 「え、ええー……ありなんですか?」  しずるの質問に、瀬能はちょっとだけ視線を逸らせてみせる。  気まずいというよりも考えるためのようだった。  たくさんあるΩに関する知識を懸命に漁っている様子にも見えた。 「一代くらいなら? まぁなんとか許容範囲だと思う。僕はね」 「そ、そういうもんなんですか。その後、その人はどうなったんですか?」  領土の一部を差し出すくらいなんだから、不倫した隣の王がどうにかしたんだろうか? と、期待を込めてしずるは瀬能を見る。 「どうもないよ。親子でその部屋で過ごして、親が亡くなり、子が亡くなっておしまい。ただしこの子供のお腹には子供がいたそうだよ」 「えっ……あ……」 「時期的に親と同じように自分で孕んだものと思われるね。まぁそう言う話があるよってだけ覚えておいて」    覚えておいて と言われた言葉に、しずるはこんなヘビーな話なかなか忘れられませんよ! と言い返したい気分だった。 END.

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