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モザイク仕立ての果実 3

 傍にいるだけでふわふわとした雰囲気に自然と微笑みたくなる、そんな幸せな日々だった。  雪虫には番がいたけれど、シェルターで暮らしているんだから相手の程度も知れるもんだ。  部屋にお邪魔すると番が持ち込んだ様々なものがあったけれど、それらのほとんどはそこらで拾ってきた価値のないものばかりで、そんなゴミを大切にしている雪虫は世間を知らないばっかりにαの都合のいいように扱われているようで可哀想だった。  せめて、指輪の一つでも贈ってやればいいのに!    雪虫のことを本当に大事にしているのか問い詰めてやりたくなったところで、セキの代わりに雪虫の身の回りの世話を手伝わないかと瀬能先生から打診を受けた。  自分の番の面倒もみれない男に雪虫を預けておくことなんてできないから、もちろん! と前のめりで引き受けた。  どっかで喧嘩ばっかしているのか、番は見かける度にどこかしら怪我をしている。もしかしたら真っ当な表の仕事ではなく、街の薄暗いところに関係するヤバいことを生業としているんじゃなんだろうか?  そう考えるとますます雪虫にはふさわしくないと思った。  雪虫と番になれたんだからαだろうに、紹介されたしずるとかいう番には全然αらしいオーラが漂っていない。  高身長でもないし、ハッとするような美貌もない、頭も悪そうだし、雰囲気もモブそのままで……雪虫は何がよくてこの男を番に……  ……もしかして、無理矢理?  僕よりも細い腕をしている雪虫を力ずくでどうにかするのなんて簡単だ。  そういえば雪虫が発情期になってなし崩し的に と聞いたことがあったような気がする。  それに何日も会いこないこともある様子を見ていると、そこまで雪虫に興味があるようにしか見えない。  年齢を考えても稼げてはいないだろうし、そんな番は必要かって思う。きちんとした生活もできないのにあんな妖精みたいな雪虫の項を噛むなんて、とんでもない男だ。  もっと慈しんでくれる人……たとえαじゃなくても、雪虫のことをもっと第一に考えて動ける甲斐性のある人と番になるべきだったんじゃないか⁉  きっと、その方が正解だ!  そこに思いつくと、雪虫がシェルターも兼ねているこの研究所で暮らしているのもわかる。  今は抑制剤もいいのが出ているし、番を解消してもサポートしてくれる人がいることで大丈夫! みたいな話も聞く。  なんだったら僕がサポートしたっていいんだ! 僕自身Ωだし、母も妹もΩなんだからどういったサポートが必要かはよくわかっている。    じゃあ、この番はいらないな って、思った瞬間、 「お前、アルファだろ」  行儀悪く僕を指さしながらそう言ってきた。

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