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モザイク仕立ての果実 7

 αは偉そうで、上からばっかりものを言って、気に入らなければ殴って、そうすればΩが改善してまともな生き物になれるんだって信じている、そんな奴らだ。  そんなαが僕の足元で土下座している。  ゾクゾクとしたものが腹のそこから駆け上がる。 「ア、アルファの癖にそんなことしちゃうんですか?」  僕の言葉がわからなかったように、喜多は顔を上げてきょとんと首を傾げた。  まるで大型ワンコが伏している姿だ と思い至ってし合うと、口の端が歪んでいく。 「アルファとかそうでないかとかは、お願いするのには関係ないじゃないか」  だからといって土下座まですると話は変わってくる。  人間としてのプライドはないのかと、冷ややかに見下ろすも喜多はきょときょとと首をあっちこっちに傾げているだけだ。  額に食い込んだ小石を眺めながら…… 「……じゃあ、電話しない代わりに、頼みたいことがあるんですけど 」  そろりと唇を濡らしながらいうと、喜多の視線がそれを追うように動く。  結局、この男だってαとかそうでないとか言っておきながら、隠している本心はそういうことでしかないんだってそれだけで十分わかってしまった。  リビングでいいから と、とりあえず定型文のような遠慮の言葉を言うと、「じゃあこのソファー、ベッドにしておくね」って言ってソファーを改造してから引っ込んでいった。  そんな改造されたソファーですら、僕が今まで寝てきたどのベッドよりもふかふかとしていて気持ちいい。 「……いい暮らししてんな」  警察に電話しない条件として今日の宿を頼んだらあっさり承諾されて……  襲われる可能性はあったけれど今の僕には行くところも頼るところもなくて、この際背に腹は変えられない。  いざ襲われたら徹底的にとっちめて搾り取れるもの全部とってやればいいだけだし。 「そうかな?」 「ぅひゃ!」 「あ、びっくりさせちゃった? ごめんね。でもお腹空いてるんじゃないかと思って。あ、ベッドにするの早すぎたね」  そう言う喜多の手にはお盆が持たれていて、いい匂いのする皿と椀が乗せられている。 「ご飯?」 「お腹空いてなかった?」  お味噌汁の香りがふんわりと鼻先をくすぐると、自分が意識する前にお腹がくるりと音を立てた。  なんて食いしん坊で空気の読めないお腹なんだ。 「……空いてます」 「そう、よかった。作り置きとかばっかりだけど、嫌いじゃなければ食べて」  作り置き と言われてちょっと表情が変わったのを見られたのか、「ごめんね」って謝りながらテーブルの上にそれらを並べていく。

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