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モザイク仕立ての果実 8

「明日はちゃんと作るからね」 「……明日には出て行きますから。いらないです」  つん と言って、住める場所を探さないと と口をひん曲げる。  別に一部の遺伝子だけがαだったってだけで、体のほとんどはΩだし今までもそれで暮らしてこられた。シェルターに入る時の検査だってΩで通ったんだから、それでいいじゃないか!  今までの人生、Ωとして暮らしてきて、Ωとして蔑まれてきたっていうのに今さらαの扱いをされたって納得なんかできない。 「そ か……セキュリティのしっかりしたところにね。管理人が常駐してたりオートロックとか……階段に飛び移ることができるような場所がないかの確認とか   」 「当然でしょう! ストーカー被害で困ったことがあるんですよ!」  バン! とテーブルを叩いて言葉を遮ると、喜多は体を跳ねさせてから大きな体を小さく縮込める。 「怖がらせちゃってごめんね。誤解させちゃって本当に悪かったと思ってるんだ……でも、あれはストーキングとかじゃなくて「おなか、空いたんですけど」  長ったらしい言葉を切るために割り込んできつめに言うと、喜多は怯んだのか何か言いたげだったが僕が食事を始めると黙ってしまった。  そうやって黙ってたら顔だけはいい方だと思うけど、喋らすとちょっとお節介すぎるって感じるから鬱陶しい。 「ど、どうかな? うちの田舎の方の味付けだからちょっと塩辛いかも  」  美味しいよ と出かけた言葉を飲み込む。  そんな調子でつけあがらせてしまうと、またこの男につき纏われるようになってしまう。 「本当に辛い。お水がいっぱい飲みたくなる」 「待ってて、今持ってくるから!」  ぱっと立ち上がると喜多はキッチンではなく寝室の方へと一度入り、ペットボトルを持ち出してくる。 「場所がなくてね、飲み水は枕元の小さな冷蔵庫に入れてあるんだ」  そんなに気にしているわけじゃなかったんだけど、喜多は僕に丁寧に説明をすると、ペットボトルの蓋を開けてから差し出してきた。  …………僕はそれを、すぐに受け取れなかった。  水は無色透明で、さっき蓋を開ける音がしたから薬か何か入れられている なんてことはないだろう。  きょとんとしている様子を見るに、悪意を持って何かしてやろう みたいな下心は見えない。 「い、いただきます」 「明日のは少し薄味で作るよ」 「だから、いりませんって」 「朝ご飯は食べるだろう?」  喜多の中ではもうすでに明日の朝食は確定事項のようだ。  好き好んでストーカーと食事をする気はなかったから断ろうとして、目の前のことに気が付いた。  

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