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モザイク仕立ての果実 12

 その後、カリカリと犬がドアを引っ掻く音を聞きながらおかずを摘んでいたとこまでは記憶にあった。  けれどそこまでで……はっと気がついた時には僕はフカフカの羽毛布団をかけられてベッドに転がっていた。 「へ……?」  目の前には見たことのないおしゃれなチェストがあって、その上にはこれまたおしゃれなオブジェが乗っている。  きょろりと見回した部屋の中は全体的にナチュラルテイストで、柔らかい印象だった。  全然知らないところで目覚めて一瞬パニックになったけれど、自分がくるまっている羽毛布団から見知った香りがする。  スンスンと鼻を鳴らすようにして嗅いでみて、喜多の普段使っている香水の匂いと微かなフェロモンを感じた。  ってことは、ここは喜多の家……寝室だろう。 「はっ!」  さっと布団を捲って服の乱れを見て、ぺたぺたと体中を触って変化がないか確認する。 「靴下……は、ないけど、なんかされたような痕ないよね?」  ね? ともう一度自分に問いかけて、念のためにそろりとお尻にも触れてみた……が、痛みもなければ違和感もない。  布団がふかふかで温かいし軽いしでぐっすり眠れたからか、体がすっきりしているくらいだ。  安全圏から放り出されて、心配で心配で眠れなくなるかと思っていたけどそうでもなかったみたいでほっと胸を撫で下ろす。 「……人生、なんとかなるものなのかなぁ」  それとも自分が図太いだけなのか?  なんにせよ、Ωなんだから多少図々しくないと生きていけない。  うーんと伸びをしてからもう一度ベッドへぽすんと倒れ込むと、喜多の香水の香り以上に染みついたフェロモンの匂いがふわりと鼻先をくすぐる。  ほっこりとしたお日様に当たった猫のような匂いなせいか、たまらなく幸せな気分になれそうで……ついふんふんと枕に顔を埋めて呼吸を繰り返した。  頭がくらくらしそうな感覚がして、側頭部がぞわぞわと気持ちいい。  αの押さえつけてくるような態度は嫌だったけれど、それでも世の中には相性というものがあるからか、この匂いはなんだか離れがたい気持ちになってしまうし、簡単に言ってしまうとむらっとしてしまう。  ここが他所様の家じゃなかったら、きっと起き抜けだしってことでイケナイことをしちゃっていたと思う。  でも、僕にだって理性はあるから、それをぐっと堪えて立ち上がった。 「……あの、喜多さん?」  そろ とドアを開けてみれば、昨日通されたリビングのソファーベッドの上で、犬と共に縮こまるようにして喜多が寝ている。  

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