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モザイク仕立ての果実 18
「濃さはこれくらいでよかった? 薄味すぎる?」
一度で丁度好みの味付けにされて、悔しかったから僕はぷるぷると首を振って返した。
ぱち と目を開けて再び同じ光景を見る。
ナチュラルテイストでおしゃれなオブジェ、目をごしごしと擦ってみてもそれはかわらなくて、僕は再び喜多の寝室で目覚めた。
一瞬、どっかのライトノベルのように同じ日を繰り返しているのかなって思ったけれど、外の明るさが違う。
窓の外が真っ赤で、夕日かなって思いながら体を起こして……ぞわりとした感覚についお尻に力が入る。
ゾワゾワゾワ……と悪寒とも違う何とも言えない感覚が腰の奥からせり上がって……
「っ、ぁ、あっ ゃ、あっ」
訳の分からない恐怖にぎゅうっと爪先へと力が籠った。
体が変だ!
とっさに股間を押さえるも、そこよりももう少しずれた部分の方が問題だ。
ぬるりとした感覚が肌と肌の間を伝って気持ち悪くて、バタバタと服を捲って体中を確認する。
「ぁっ、なんっ なんかされたのかもっ 」
そう言えばなんかやらしい夢を見た気がしないでもない。
「えっと……えっと……料理がおいしいって話をして、……」
食べ終わった後にもう少し水分が欲しくて、でも温かいものは欲しくなかったから水のペットボトルをもらって、デザートのキャラメルパウンドケーキを食べた。
それから?
お腹がいっぱいになったからか眠くなってきてしまって……
「でも今日、不動産屋に行かないとってことで 」
喜多が車で送ってあげるから少し横になってから出かけたらいいよって言ってくれたから、お言葉に甘えてちょっとだけ目を閉じて……今に至る。
「……っ」
ぶる とまた体が震えた。
「きっと寝てる間にナニかされたんだ!」
羽毛布団を蹴り飛ばしてベッドから飛び降りた……瞬間、力が抜けてがくんと床に倒れ込んだ。
したたかに打った膝に悶絶していると、リビングの方から喜多が駆け込んでくる。
真っ青な顔をして僕を見ると、おろおろと僕の周りを回り始めた。
「ど、ど、どうしたの⁉ 怖い夢でも見た⁉ それとも具合悪い⁉ どこか痛いとか⁉」
「っ、っ、だ、大丈夫だからっ」
膝の痛みを我慢しながら手を突っぱねて喜多に距離を取らせる。
「いやっ! 大丈夫じゃない! あんた! 僕にナニしたの⁉」
「な、何? なにって……何も……あ! ベ、ベッドに運んだけど……ごめんね? でも巳波ちゃんは毎日頑張ってて疲れてるだろうから、きちんとしたところで眠った方がいいと思ったんだ!」
必死に言い訳をする辺りが、余計に怪しい。
睨みつけてやると、喜多は何かを思い出したように飛び上がってリビングへと戻っていく。
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