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モザイク仕立ての果実 19

  「あ! ちょっと! まだ話は終わってないし、喜多さんがナニしたか聞いてないよ! もうっ警察に電話するからね!」 「待って! 待って! 待ってってば! これ、ココアもち用の見守りカメラなんだけど、これで確認してもらえたら何もしてないってわかるよ」  そう言うと喜多はメモリーカードを取り出してパソコンで読み取る。  映像はリビングを映していて、パウンドケーキを美味そうに頬張っている僕の姿が映っていた。  音声はないし、そこまで画質はよくないけれど右下に時間も表示されているから何が起こったか確認するだけなら十分だ。  パウンドケーキを食べてお腹いっぱいになった僕はソファーにもたれて目を擦り出して……喜多の口が動いているから、何か話しかけてくれているんだろうけど、一切の記憶はなかった。  喜多の指がマウスを操作して映像が早送りされる。 「この後、食器の片づけしてから、巳波ちゃんを運んだんだよ」  早送りされているために滑稽な動きで動く喜多は、机の上を拭き終えると僕をお姫様抱っこして画面から消えた。 「ちょっと! これじゃあ何もしてないなんて証拠になってないよ⁉」 「あ、でもほら」  指さす先を見ると、右下の時計は二分ほどしか進んでいない。  寝室に入って僕を寝かせて……長い? 短い? これくらい?  どれくらいあれば僕にイタズラできるのか考えてみたけれど、二分じゃさすがに無理かなって結論が出る。  その後、喜多はリビングで書類仕事のようなことをしたりお茶飲んだりして過ごして、突然飛び上がって寝室の方へと駆けていく。   「み、見守りカメラってこっちにも置いてるんじゃないの?」 「あるよ、でも巳波ちゃんが寝てるからこっちのカメラは切ってあるんだ」  そう言うと喜多は寝室にチェストの上に置いてあるオブジェ……じゃなかった、カメラを持ち上げてメモリーカードを取り出す。  先ほどと同じようにパソコンの画面に映っているのは空っぽのベッドだ。 「ちょ ちょっと! なんで僕に触ってるの⁉」 「いや……運んでるだけだからっ! ベッドで寝た方がいいからって!」  ぽかぽかと拳を振り下ろしている僕達の前で、過去の喜多は僕をベッドに寝かせると整えてさっさと寝室を出て行ってしまった。  それからは、うっすらとカーテンから日が差し込むのと僕の寝返りがあるくらいで変化はなくて……  ずいぶんと早送りして、寝ぼけ眼で起き上がる自分が映る。 「この後、見守りカメラつけっぱなしだったって思い出して切ったから、それからは撮れてないんだけど」

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