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モザイク仕立ての果実 22

 カメラは何度も確認したから喜多が何かしているってわけでもなさそうだし、喜多が言うには僕との相性がいいから部屋に染み付いているフェロモンとか匂いとかそういうのに反応しちゃってるんじゃないかって話だった。  だから布団を新しいのにしてもらったんだけど……この家自体が喜多の家なんだから、それで解決はしなかった。  抑制剤を変えてもらっても変化はなかったし、朝起きた時だけの話だったから騒ぎ立てるのも嫌で……居候させてもらってるんだから我慢するしかない。 「んんー……いい働き口ないなぁ」  喜多がデザートを用意している間に携帯電話で求人広告を眺める。  今は短期のバイトで凌いでいるけれどやっぱり決まった収入が欲しいし、しっかり稼いで家も借りたい。  でも、Ωだときちんとした職ってのは少なくて……  夜のお店だったら歓迎って書かれてるんだけど、それ以外はバース性をいうと断られるばかりだった。 「焦らずにじっくり見つけたらいいよ。オレは巳波ちゃんがいてくれて幸せだから」  そう言うと目の前に脚つきのグラスを置く。  中には綺麗な色に煮込まれたリンゴのコンポートとアイスが入っていて、おしゃれに葉っぱが飾ってある。 「そうなんだけど、食費も満足に渡せてないなって思うと……夜の仕事かなぁ」 「だ、だめ! そんな投げやりなことしちゃ! 巳波ちゃんはお母さんたちに仕送りもしてるんだから、無理に食費払おうなんてしなくてもいいよ」  テーブルを挟んで身を乗り出してくる喜多を押し返して、「まぁそうなんだけど」とうめきながらコンポートに口をつけた。  洗濯機を回すぐらいならできるからって、洗濯物は僕の担当になった。  乾燥機を使えばいいよって言ってくれたけど、僕としてはやっぱりお日様に当てて乾かしたいし、喜多に任せると洗濯物に何かされないかなって心配もあったからちょうどよかった。 「こっそりオカズにされたりしたら、たまんないもん」  ポケットに物が入ってないか確認しながら一つずつ放り込んでいく。  少し暖かくなったからワイシャツを放り込もうとすると一際強く喜多の香りが立ち上った。  別に汗臭い というほどのニオイではない。  けれど普段喜多が使っているシャンプーや整髪料の匂いとか、香水? コロン? の香りとか……あとは、…………それの奥底で沈むように存在するフェロモンだとかが鼻をくすぐる。  ちょっと森林浴をしている気分になるような匂いだな と思いながら、すんすんと鼻を鳴らした。  相性がいいと喜多は言っていたけれど、嫌な匂いだと感じないってことはそういうことなんだろうか? それともαのフェロモンはすべからく良いと思うんだろうか?

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