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モザイク仕立ての果実 40
仕方なく深呼吸をして、深呼吸をして、深呼吸をして……上辺だけでも落ち着けると、仕方なく立ち上がって朝ごはんを食べにいく。
燻り続ける体を持て余してはいるから毎朝こんなことになるのかもしれない。
発情期が近いのかなって指折り数えながらリビングに行くと、フルーツとシリアルと生ハムを使ったサラダが並んでいる。これにオレンジジュースか牛乳が出て来るから、ここから出て行きにくいんだよなぁ。
「今日の予定はぁ?」
シリアルの中にある粒をスプーンの先端でつつきながら尋ねると、
「図書館から借りてきたものに目を通そうと思って、お休みもらったんだ」
オレンジジュースを飲みながら喜多の視線が積み上がった本に向く。
あんなにいっぱい借りて来て枕にでもするのかなって思っていたんだけど、どうやらきちんと読むようだ。ここから見える背表紙の文字を追いかけてみたけれど、「Ω研究のためにはらわれた犠牲者」だの「種の進化の中のバース性とは」「細胞の〜〜(?)による性分布」「〜〜と〜〜のなんとか物語」とか読めない文字が並んでる。
一番下のものなんか英語? で書かれているから全く読めない。
「突然の読書週間?」
「あはは、この前、巳波ちゃんが教えてくれたでしょ? 巳波ちゃんの体のこと」
そう言われてちょっと恥ずかしく思ったけれど、喜多はあれだけの説明で僕の体がどういった状態なのかをわかってくれたらしい。
「その……何か手助けできないかなって思ったんだ。症例自体が少なくて……図書館の本じゃ調べるのにも限界があるだろうけど、……でも、君のことで手をこまねいていたくないんだ。できることをやろうと思う!」
キラキラと瞳を輝かせて言うけれど、僕はこんな量の本に目を通したくてはぁって大きなため息を吐いた。
「巳波ちゃん! これ見て!」
ポテチを食べながら携帯電話を弄っていると、ずっと本を読み込んでいた喜多がはっと顔をあげて僕を呼んだ。
画面の中の漫画がちょうどクライマックスで……集中力を途切れさせたくなかったんだけど仕方がない。
そろりと喜多の隣ににじり寄ると、喜多は指先で僕に読んで欲しいところをなぞり始めた。
「……ビッチング?」
ぽつん と言葉に出してみるけれど心当たりのない単語だった。
意味をおぼろに考えてみるも……やっぱり分からない。
もしや人をビッチとかなんとか言いたいんだろうか? こう見えても僕は未経験だしビッチとかそういうことは一切ないのに!
やっぱりαはそこんところの考え方が緩くて、無意識に人を傷つける人種なのかもしれない。
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