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モザイク仕立ての果実 42
「ビッチング、は。アルファ性の人間(のちアルファ)が性的な興奮時にアルファがアルファに対して性行為を行い、その際に体内へアルファの精液を大量に接種すれば、受手側のアルファの性が性変転を起こすことが稀に報告されている」
自分で口に出してみて、αって言葉が多すぎて……は? ってなってよく分からなかった。
でも、α同士のセックスで、本来αの体に変化が出たって話なのはよくわかった。
鼻で笑ってしまったけれど、もしこれが完璧なΩになれる方法だとしたら……?
もう手元に写真すら無くなっちゃったけど、僕と雪虫の友情はきっと不滅だから僕を待っててくれるはずなんだ。
「可能性が……ある?」
思わずさっと他の本にも目をやる。
そうするとこの本と同じように、付箋の貼られている本が何冊かあるのに気がついて……きっとこの付箋部分が、αの部分をΩに変える情報が載っている部分なんだ!
時計を見て、そろそろ喜多が帰ってくる時間だと思ったけれど止まらなかった。
僕のこの呪われた体をどうにかする方法がある!
それはここ最近で一番嬉しいことだった。
急いで小難しそうな本を開いて、喜多が付箋を貼ってあるところを読んでいく。その中身は先ほどの本と似たようなことが書かれていて、α同士でエッチをしていると時々受け身側がΩになってしまうことがあるってことがわかった。
「…………ぇ、じゃあ……アルファとヤってたらそのうち僕も完璧なオメガになれるってこと だよね?」
本にはたくさん精液を出してもらわなきゃけないとか、繰り返さないといけないとか、めちゃくちゃ感じなきゃいけないとか……あと後ろの方でイケるようにならないとダメとか書かれていて、ちょっとハードル高くてビビる。
「でも…………アルファに抱かれたらオメガになれる……」
呟くと、なんだかそれが一番いいんだって思えて来るから不思議だ。
「アルファ……アルファの知り合い……」
急いで携帯電話を開いてアドレスを見てみるけれど、僕の電話帳には元々αの知り合いなんていない。
あいつらは人を見下してくるから、連絡先なんて渡してこないし……
「出会い 系? とか? そこで見つけたらいいかも!」
ちょっと我慢してやってΩになるまで手伝わせたら、ブロックして逃げちゃえば面倒臭くないしいいかも……
――――ガチャン――――
大きく響いた音に飛び上がって慌てて本を元に戻そうとしたら、本の雪崩が起きてザザーって倒れてしまった。
「わっ! どうしたの⁉︎」
リビングに入ってきた喜多がうまく開かない扉に困惑の顔をあげて……
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