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モザイク仕立ての果実 46
再びはぁ と深く吐き出された息と、理性を取り戻して光る瞳に見つめられて、僕はこくりと小さく頷き返す。
それでそのまま喜多を蹴り出して鍵をかけて……ってすれば完璧だったはずなのに、鼻先にふわりと香ってきたフェロモンに体が跳ねてしまった。
森林浴をした時のような気持ちの良さと同時にねとりとした絡むような気配……
「んぁっ」
途端ゾクゾクと背筋を駆け上がってきたものに抗えずに声が漏れた。
応えるように身体中から反応が返って、下着の中はぬるつくし胸の先端は触って欲しいとばかりつんと尖る。
「 っ、巳波ちゃ……ごめ すぐに、出てく 」
背を向けようとした喜多の腕に飛びついてしまったのは自分の意思じゃなかった。
体が勝手にしがみついて、そこに乳首とか股間とかを擦り付けて……
「あ゛っ んっはっ、あっん っ」
布越しに腰を擦り付けるだけで甘い声が上がる。
下着の中のぬるぬるが溢れて染み出して、僕が腰を擦り付けた喜多の腕を汚して……
「ひ んっ気持ちぃ きもちぃよぉ 」
「巳波ちゃんっ だめ、いけない っ」
喜多はそう言うけれど口ばっかりだった。
発情した犬みたいに自分の腕に向かって腰を振り続ける僕を見下ろして、ブルブルと震えるばかりだ。
でもわかってる。
喉仏がゆっくり上下して、僕を見る瞳の色が濃くなってその奥にじれったさを表す感情が埋もれているのを。
僕がゆーっくり焦らすように腰を動かすと、指がぴくぴくと動いて僕を促そうとするのを。
「ぁ、あぁ ん!」
染み出した先走りでシルクの寝巻きはドロドロで、股間を擦り付けた部分はねとねとと糸を引いている。
お互いの跳ねた息が絡んで触れあいそうになった時、喜多の体がぐらついて慌てたように離れていく。
「ごめんっ……ごめんっっ」
真っ暗な中で急に動いたから喜多の足が積まれてあった小難しい本を蹴り飛ばす。
大きな音を立てて散らばった本は付箋が貼られたページを広げて落ちて……
「…………」
じわ と胸の奥が騒ぐ。
αに中出ししてもらえれば完璧なΩになれるって、熱にグラグラと茹でられた脳みそが囁いた。
「 喜多 さん、喜多さんっ! ぁ 」
どろどろになった下半身を持て余しながら喜多にセックスしたいと言おうとして……でも、流石にありんこみたいな道徳心がそれを止める。
「ぁー……あ、あ 」
繰り返し音を出す口は言葉を象ってくれない。
肌を焼くように感じる喜多のフェロモンに体がぐらついて、自然と体がそちらに傾いで……よろめいた体を喜多が受け止めた瞬間にダムが壊れてしまった。
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