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モザイク仕立ての果実 54

 画像には映っていないけれど、白い足の奥に密やかにあるソコは誘うようにクパクパとひくついていたのを俺はしっかりと覚えていた。 「あれを我慢するの、大変だったなぁ」  皿洗いが終わりかけて鼻歌を歌いそうになった時、着信があった。  発信者の名前はココアもちを預けている悪友で……取る前から大体の内容がわかってしまう。  せっかくいい気分だったのに と少し取るかどうか迷ってから、長く続く着信にしかたなく通話ボタンを押した。   「はーい、朝っぱらから何?」  携帯電話を肩と耳の間に挟んでソファーに座ろうとしたところで、電話の向こうからキャンキャンというココアもちの無駄吠えが響いてくる。  電話越しだっていうのに耳をつんざきそうな鳴き声につい苦笑が漏れかけ…… 「お前っ! いい加減迎えにこいよ!」  追いかけるように悪友の怒鳴り声が鼓膜を揺さぶる。   「んー……」 「すごくもちが寂しがってるぞ! おい! もち! スリッパ噛むな!」  向こうでしばらくバタバタした音がして、再び友人の声が聞こえる。 「このバカ犬、なんとかしろよ! 何にでもケンカ売るしうるさいしいうこと聞かないし! 待てもお手もできないし!」 「あはは、あー……そういうとこが可愛いんだろ? うちのココアもちはおバカだからなぁ」 「そういうのよくないぞ!」 「よくなくても、そこが好きな子に似てて可愛いんだからしょうがないよ」 「お前、ちょっと頭沸いてないか? 病院行け! 薬もらってこい!」 「くすり……」  はっと気づいて寝室へと向かい、小さな冷蔵庫の中から水のペットボトルとサイドテーブルから小瓶を持ち出す。 「こっちは瓶を変えて…………こっちは、もういらないな」  睡眠薬を流し込んだ注射針の跡を指で擦ってから、ミネラルウォーターの蓋を開けて排水溝に流していく。  もう寝ている巳波の体を弄って性感を高める必要はないから、これも必要ない。  彼は十分、自分との相性のよさを理解したんだから。   「おい! 聞いてるのか⁉︎」 「聞いてるよ。でも、今うちにいる子が犬嫌いなんだよね」  虐待の跡と犬への怖がり方、それから後背位を嫌がることから何をされたかは想像できる。  どこまでされたかは聞かないとわからないけれど…… 「ああ、あのオメガ、うまくいってんの?」 「うん」 「うぇ!」  電話の向こうの友人はうんざりした様子だ。 「またシェルターに逃げ込まれて終わりなんじゃねぇの?」 「今度の子は大丈夫」  媚薬をビタミン剤の瓶に移し替えながらにっこりと笑う。 「シェルターに入れないオメガって、最高だよね」  きっちりと瓶に蓋をして、カコカコと振ってみせた。   END.  

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