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落ち穂拾い拾い的な 結局好きが勝つ 3

「い 言われてないもん」  そう言うと巳波は俺の手の中から爪先を引っこ抜き、小さく膝を抱えてしまう。  拗ねて小さく縮こまってしまった姿は可愛らしいけど同時に股間が丸見えになっていて扇情的だった。  それはどのカメラで撮られた画像にも残っていない姿で、非常に可愛らしい。  ベッドで寝ている姿も可愛かったし、起きるたびに俺の悪戯で感じてしまっている姿も可愛かった。洗面所でこっそり俺の服の匂いを嗅いで興奮している姿もいいし……媚薬でドロドロになっている姿も最高だ。 「な、なんだよ、なんとか言えよ。オメガだからって騙せると思ったの? 喜多さんがちゃんと言ってくれてないの、僕は覚えてるんだからね!」 「俺との会話、ちゃんと覚えてくれてるんだね」 「そんな話してない!」  顔を真っ赤にしながら巳波はそっぽを向くけれど、膝を落ち着かなげに擦り合わせている。  少し暑そうに首元を引っ張っているところを見ると、さっき入れた媚薬が溶けて吸収されて来ているんだろう。 「もういい! ちょっと、一人になりたい」 「そんな寂しいこと言わないで! 巳波ちゃん……俺、大好きだよ」  はっきりと言葉にすると、熱でぼんやりとなりかけていた巳波の瞳がはっとこちらを向いて正気を取り戻す。 「ぅ ……い、今更なんだよ、機嫌取りに言ってるだけでしょ」 「そんなことない! ずっと心の中で言ってたから、ちゃんと伝えてるんだとばかり思ってたんだ」  そっと距離を詰めても巳波は逃げようとはしない、と言うよりも媚薬が効いてきてそれどころじゃないんだと思う。  傍に寄っただけでふわふわといい匂いが鼻先をくすぐる。 「好きだよ、大好き。どれだけたくさん言えばわかってくれるかな?」  身を乗り出して逃げられない巳波の耳元で「好き」って囁くと、ひゃあって甲高い声が上がって、一気に濃いフェロモンの匂いが立ち上る。  ずり上がっていく巳波を追いかけながら「好きだよ」って繰り返すと、その度に小さな悲鳴と匂いが返って…… 「ちょ 待って……なんかドキドキして、体が変」 「それは俺の告白に体が先に反応してるんだよ」 「そ、そうなの?」 「すごくドキドキして、俺に抱かれたくなってるんでしょ?」 「で、でも、なんか違う気がする」 「そんなことないよ! 巳波ちゃんが俺を受け入れてくれてる証拠だよ」  薬で引き出された脈拍を恋愛の動悸と間違えるなんて……なんて可愛いんだと、腕の中でくたりと倒れ込む巳波を見つめる。 「ぅ゛……うん。なんで抱かれたくなってるってわかるの?」 「巳波ちゃんのことが大好きだからだよ」    にこりと微笑みながら言うと、巳波は俺にキスをしながら「そっか」と返してくれた。 END.     

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