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第5話

今日は夏まつりだ。 「せんせー今日暇〜?うちらとまつり行こーよー」 「仕事あるんだってー。てか、生徒と行くわけないだろー?」 生徒たちはちっとも残念じゃなさそうに残念って笑って手を振って帰っていった。 奏のそばにいるのがやっぱり辛くて、高校を卒業して黙って県外の大学に入学した。 スマホの番号も変えたし、ラインも変えた。 一度も会わなかったのは当たり前なのに、寂しくて何度も泣いた。 でも、大学の新しい友達と騒いでいると、奏のことはほとんど頭に浮かばなくなった。 昔からの夢だった教師になることもできた。 母校で先生として働くことになったのは偶然だった。 もう、3年目なのに夏まつりの張り紙を見ると胸が騒ぐ。 今年は…行ってみようか。 さすがに会わないだろうし、たとえ会ったとして俺だと気づくか怪しい。 茶色だった髪は今は黒だし、ピアスの穴はふさがってる。 『もしもし兄貴?今日暇?』 『倫?暇だよ。急にどうしたの?』 『一緒に夏まつり行かない?』 もちろんという返事を聞いて、急いで仕事を片付けた。 待ち合わせ場所には、すでに兄貴がいた。 友達と一緒に住んでいるらしく俺は一人暮らしだし会えないから、会えて嬉しい。 「夏まつりなんて久しぶりだね。急にどうしたの、倫?」 「なんとなく来たくなったんだよね」 あの頃と同じようにいっぱいの食べ物を買って、でもそれに苦笑する人はいなくてとてつもなく切なくなった。

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