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第8話

 大樹は、信じられない、というような顔をして、彼方を見ていた。 「なんで……そんなクスリ」 「……何でだと思う?」  大樹は、本当に戸惑っているようだった。 「……俺は……、遠慮とか、して欲しいタイプじゃないんだよね。気を遣って貰ってるのも、大事にされてるのも解るんだけど……歯がゆい」  そう言った瞬間、どくん、と胸が跳ねた。  全身の血流が、いきなり沸騰するみたいに、鼓動が早くなって、心臓がバクバク言っている。身体が、熱くて、ほんのかすかな刺激に、びくっと身体が震えた。エアコンの風が当たる程度の、かすかな刺激に反応してしまって、彼方は戸惑う。 (昨日より、凄い薬だとは思ったけど……)  本当に呑んで良かったのだろうか。身体の血液は一点に集中する。 「あっ……はっ……っ」  自然に、息が荒くなる。大樹を、見ると、彼方を見ながら、呆然としていた。けれど、視線は、外せない。 「……あつ……」  ネクタイを外して、シャツのボタンをくつろげる。 「凄い……熱い……よね? ……部屋……」  動く旅に、服が肌に触れる。それで、あっという間に、追い立てられて、我慢が出来ず、彼方は、無我夢中にスラックスの前をくつろげた。 「……は……、あ……っ」  そこは、十分硬度を持って張り詰めている。  下着の上から触れてみたら、つま先から頭の天辺まで電撃に触れたような快楽が走って、びくん、と身体が揺れる。 「あ、だ……、も……」  彼方は、チラリと大樹を見ながら、そこを手で撫でた。もどかしい。直接、扱ったほうが気持ちが良いのは解っているけれど、ここまでしても、全くうごく気配のない、大樹が恨めしい。 「大樹……は、さ」 「ぇえっ?」  大樹の声が、裏返っていた。 「……俺が、好きじゃない……とか? ……俺、押しかけ恋人、みたいなもんだし……んんんっ」  早く、触れたい。この場で、欲望をさらけ出してしまおうか。けれど、彼方の望みはそうではなかった。大樹に、触れて欲しい。それだけだ。 「……き、嫌いとかは……ほぼ、一目惚れ……だったし………好きだから、嫌われたくない……って、解らない、かな」  大樹が、眼鏡を外した。  どきっとした。今から、触れてくれるのだ、と彼方は期待して、胸の奥が、甘く疼く。 「だって」  自分からは、したいって言わないから。  ただ、それだけだ。 「……かな」  甘い声音だった。 「俺……、ね……」  そっと、顔が近付いてくる。キスをされる。啄むような軽いキスを何度も繰り返されて、胸が怪しく騒ぎ出す。もう、ダメかもしれない。触れて欲しくて、また、おねだりしてしまう。けれど、大樹の熱を感じたい。その方が、大切だった。 「……俺ね」  と大樹は、甘く囁く。胸が、跳ねた。少し掠れた低くて甘い声は、毒のようで、頭の中が、ぐらぐらと揺れる。 「……昨日の、全然、満足出来てないんだけど?」  まさか、そんなことを言われるとは言われなくて、「えっ」と彼方は、小さく呟く。 「……昨日の続き、してもいいよね? かな」  腰が、重く、甘く、震えた。  いささか、強引だったが、大樹のほうから誘って貰うことには、成功したと言って良いだろう。 「うん」  うっとりと答えながら、彼方は大樹の首に腕を回した。大樹の手が、彼方の中心に触れる。 「ん……っあ」 「もう、こんなだ……。かな、本当に、セックス、大好きなんだ」 「あ、うんっ、……好き、だからぁ……」  語尾が、甘くなった。手で、そこを弄りながら、首筋に舌を這わせている。ぬめるのと、ざらっとするのと、他人の体温。それを、いつもよりも鋭敏に感じて、声が、止まらない。 「……そろそろ、うち、防音入れないとダメかな」  大樹が、くすっと笑う。 「……っ」  声が大きい、と言われたようで、恥ずかしくて、唇を噛む。閉じた唇に、そっと大樹がキスをした。 「……声、我慢されたら、俺は、つまらないけど……。お隣さんとか、上下の人とか……、この、カワイイ声を聞いてるのかと思ったら、結構……イラっとくるよね」 「えっ……っんっ?」 「でもね、かな。今日は……近所迷惑の貼り紙出されるくらい、しても良いからね」  薄い微笑みを見た時、彼方は、確信した。 (これ……絶対、そこまで、鳴かされる……っ)  おとといまでの大樹ならば、そんなことをしなかった。けれど、昨日、理性は飛んだのだろう。そして、今日は、媚薬を使ってでも、再び仕掛けてきた彼方を見て、セーブする必要はないと、思ったのだろう。 (……俺……、持つ、かな……)  身体はいつもより過敏だし、大樹の様子は、いつもとは全く違う。それに、不安はある。 限界を超えて……抱かれたらどうなるのか、体験したことはない。だから、単純に怖い。  けれど、彼方は大樹にぎゅっと抱きついて、 「……いっぱい……鳴かせて……」  と、自ら、申し出ていた。

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