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「とにかく、疲れるから横になれ。まだ熱あるんだから。花なら俺が片付けるから」
そう言って俺の頭をポンポンとすると花をまとめてゴミ箱に捨てた。
「俺のことより陽翔はどうなんだ? この病気患ってるんだから片想いなんだろう? しかもこんなに花吐いてさ。なんで告らないんだ?」
「俺こそ、望みのない恋だから」
望みのない恋か。自分で言って切なくなる。
「でも、前に合コン行ってたよな? あれは、その人を忘れるため?」
コクンとひとつうなずく。
合コンに行ったのは、彼女でもできたら涼介を忘れられると思ったから。ま、結局、彼女作るどころか合コン中でも涼介のこと考えてたけどな。そう思うと、我ながら馬鹿だなーと思う。思うけど、どうしようもないんだよな。
「陽翔が告ってダメなことなんてあるわけないだろ」
ほんと涼介って優しいな。慰めてくれるんだもんな。最も、この気持ちがバレたら、さすがに無理かもしれないけど。俺が好きなのが自分だなんて夢にも思わないんだろうな。
「俺はいいの。もう無理だってわかってるから諦めてる」
「なんで諦めるんだよ。そんなのわからないだろう」
「わかってるよ。その人には好きな人がいる」
そう言ってたもんな、涼介。報われない誰かを何年も想い続ける涼介とその涼介を何年も好きな俺。
二人とも報われない恋してるなんてな。でも俺は涼介を応援してあげたい。そうしたら涼介だけでも、この病気から開放されるから。いくらなんでも涼介が可哀想だ。
「俺はいいからさ、涼介は頑張ってみなよ。ダメって思ってても実は、ってあるかもしれないだろ」
「俺はいいんだ。陽翔こそ頑張ってみろよ。応援するよ」
「ありがとう。でもいいんだ、俺は」
二人して同じことを言い、思わず笑ってしまう。
「何言ってんだろうな俺たち」
「ほんとだな」
「そんなことより熱あがってないか。喋り疲れたりとかしてないか?」
「大丈夫。涼介が来てくれたから元気でた」
これくらいなら幼馴染みでも言うであろうぎりぎりの線。
ただの友達じゃない。仲の良い、兄弟みたいな幼馴染みなんだ。言ってもおかしくない。
「ならいいけど。早く熱下がるといいな」
「うん。ありがと」
「じゃあ、今日は帰るな。また明日来るから」
「うん」
そう言って涼介は帰って行った。
涼介が来てくれて嬉しかった。いや、見舞いであれば誰が来てくれたって嬉しい。拓真が来てくれたって嬉しい。でも、涼介の場合はまた別だ。
もともと報われない想いだとわかってた。それが今日、ほんとに叶わないものなんだと再実感した。
花吐き病を患うほど強く誰かを想い続けている涼介。その誰かが羨ましい。そう思ってしまうほどってすごい。もう完敗すぎて泣くこともできない。
それでもきっと友達としての一番はきっとくれるはず。そう思うとほんの少し気持ちが上向く。
でも、ここまで失恋確定なのに白銀の百合は吐けない。やっぱりはっきりとフラレないとダメなのかもしれない。それか俺が誰か別の人を好きになるか。
直接はっきりとフラレるのはさすがに勇気がないから、やっぱり別の誰かを好きになるしかないらしい。
とは言え、合コンで今はまだ無理だと思い知ったばかりだ。もうしばらくは花吐き病と付き合っていかなきゃいけないらしい。
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