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「よっ! 熱どう?」 「だいぶ下がってきた。明日か明後日には学校行けそう」 「そうか。良かったな」  翌日、拓真が見舞いに来てくれた。 「昨日どうだった?」 「昨日?」 「あれ? 香川来なかった?」 「涼介? 来たよ」 「で、何もなかったのかよ」 「あのな。昨日はまだ熱高かったの」 「なんだ」 「なんだ、じゃないよ。あ!」 「なんだよ。言えよ」 「涼介、花吐き病発症した」 「は?」  俺の言葉に拓真は目を丸くした。そりゃそうだよな。だって彼女いるんだから。 「内緒の話な。絶対に誰にも言うなよ」 「言わないよ。大体、花吐き病なんて誰も信じないだろうし」 「何年も叶わない恋してるんだってさ。彼女は、好きになれるかもしれないからって告られたら付き合ってるらしい」 「なんか、どっかで聞いたような話だな」  あ、そうか。俺だ。何年も涼介に叶わない恋をしてて、想いを昇華させるために彼女でもできたら、と合コン行って。涼介も全く同じ。俺たち、同じことをしているのか。 「でもさ。白銀の百合吐かないんだよ」 「きちんと告ってフラれないとダメなんじゃね?」 「そうなのかなー。もうさ、100%叶わないじゃん。なのにダメなのな。きちんと告れ、なんて無理だよ。友達でもいられなくなる」 「まぁな。だから彼女作ってその子好きになるしかないじゃん。もし女の子が無理なら男でもいいけどさ」 「いや、男は興味ない」 「そうなの? じゃあやっぱり女の子だな。でも、行ったばかりだしな。もう少ししたらまた行こうぜ」 「うん」  完全に叶わないとわかっていても白銀の百合を吐けないのなら、そうするしかない。今度行くときは涼介のことばかり考えないようにしないとな。  でも、ほんとのことを言うなら、男に興味はないけど、女の子にだって興味はないんだ。興味があるのは涼介だけなんだ。だって、初恋だからな。 「合コン行かなくても拓真が彼女作れば良くない?」 「お前、嫌味か? 悪いけどお前と違ってモテないんだよ」 「俺だってモテないの知ってるだろ」 「その言葉は金輪際聞かない。結梨花ちゃんがいただろうが」  結梨花ちゃんか。結構ガツガツ来る子だったよな。それにちょっと引いたっていうか。と、そのまま言ったら怒られた。 「お前、超贅沢! 俺が変わりたいよ。いいよなぁ。俺だって、引いたわ、なんて言ってみたいつーの」 「拓真だって、前回はたまたまいなかっただけだろ。現に前はきちんと彼女いたんだからさ」 「かもしれないけどさー。でもでも、これで陽翔がモテるっていうのが判明したよな」 「それこそ、たまたまだよ」 「そうかなー?」  なんて話をしていると、そこに涼介が来た。 「涼介、おかえり」 「ただいま」 「なんだよお前たち。夫婦かよ」  拓真が唸ってるけど、俺と涼介にしてみたら何言ってるんだ? って感じだ。だって、こんな会話、もうずっとしてきている。今さらだ。だって小さいときから兄弟同様に育って来たのだ。家族同然だ。 「それよりなに? また合コンの話?」 「そう」 「陽翔には彼女なんて必要ない」 「香川ー」 「それは陽翔にも言ってある」 「え? そうなの? そんなこと聞いてないぞ」  そうだった。前に合コンから帰ってきたとき涼介に言われたんだった。すっかり忘れてた。やべ。 「ごめん涼介。忘れてた」 「陽翔!」  涼介はどうもこの件になると怖い顔をする。なんでだろう、と思うけれど、そんなことを聞くのも怖い。そんな感じだ。

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