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 焼きそばとたこ焼きで腹を満たした後は文化祭を見てまわる。  一年生のクラスが縁日をやっていて、ヨーヨーすくいや射的があった。縁日なんて久しぶりだな。子供の頃は涼介と一緒に親に連れて行って貰ってたけど、ここ数年は行ってない。  ヨーヨーは取れたところで持って帰るのも邪魔かと思ったけど、やっぱり祭りだと思うとやってしまうよな。俺も拓真も無事ヨーヨーゲット。その後は射的だった。射的は的が小さくて当たらなかったけど。ま、ヨーヨー取れただけいっか。  その後はヒーローショーを観て、と楽しんだ後は涼介のクラスのカフェに行く。女装コンテストの時間が近づいているので、涼介を迎えに来た形だ。  カフェには予想通り女の子が多い。きっと涼介目当ての子も多いんだろうなと思うと、ちょっと面白くない。でも、涼介がモテるのは今さらだしな。複雑な男心だ。  教室の中に入ってみると、黒板はアートになってるし、窓はステンドグラスになっていたりと凝っている。 「手抜きな俺たちのクラスと大違いだな」  迷路はダンボールを組み立てて設置しただけで教室を特に飾ったりはしなかったので、文化祭の用意も前日に設置するだけにするべく組み立てただけで、他は特に何もしていない。当日の今日だってスタッフは交代制だけど、クラス全員で回すから拘束時間は短い。うん、ほんと手抜きな。  俺と拓真が教室の出入り口近くに座り、ドリンクを注文する。ドリンクはアイスオレンジティーだ。ただのアイスティーが出てくると思ったら、グラスの下の方にアイスティーが、上の方にはオレンジジュースが入っていてグラデーションが綺麗だ。あぁ、こういうのがあるから女子が多いというのがあるのかもしれない。SNS映えを狙っているんだろう。そこに涼介みたいなイケメンがいたら女子で溢れるのも納得できる。  涼介はテーブルの間を様々なドリンクを持って回っている。でも残念なことに俺と拓真のドリンクを持ってきてくれたのは、他の男子生徒だったけど。 「なんで女の子じゃないんだよー」 「別にドリンクなんて誰が持ってきたって一緒じゃん」 「ほー。陽翔がそれを言うか?」  内心、涼介じゃなかったことに落胆していたのはお見通しだったらしい。仕方ないだろ、好きなんだから。まぁ、家に帰れば普通に涼介が持ってきてくれるなんていうのはあるんだけど、こういうところでってなんか別じゃん?   涼介の休憩時間まで拓真とドリンクを飲んで待っていると、どんどん女装コンテストの時間が近づいていて緊張してくる。 「大丈夫だって。陽翔なら優勝するから」 「恥ずかしい思いしてドレスなんて着るんだから、それで優勝しなかったら笑えないだろ」 「まぁな。でも、そのおかげで香川にエスコートして貰えるんだからいいじゃん」 「おい! こんなとこで名前出すなよ」 「別に構わないんじゃね? 歩きにくいからエスコートして貰うだけだし。何しろ幼馴染みなんだからさ。陽翔は気にし過ぎ」  そうか? 気にし過ぎなのか? でも、どこで涼介の彼女に聞かれるかわからない、と思ってしまうのは俺だけなのか?  まぁ、確かに拓真の言う通り、ヒールなんて歩くの怖いから、幼馴染みの涼介がエスコートしてくれるだけなんだよな。俺が気にしちゃうのは涼介が好きだからで。だから普通がどうかがわからない。  そこへ涼介がやって来た。 「ごめん、待たせて。ドリンク飲んだ?」 「お疲れ。ドリンク飲んだよ。グラデーションが綺麗だった」 「だろ? いれるのにコツがいるけど、そこさえ上手くやれば綺麗にいれられるんだ」 「SNS映えしそうだった」 「あぁ、女子が結構写真撮ってたな。あ、陽翔、女装コンテストの写真どうするの? おばさんが撮るのか?」 「撮って貰えって言ってたな」 「じゃあ俺が撮るよ」  と拓真がカメラマンに立候補してくれる。  「コンテスト終わったら撮ってやるよ」 「うん、お願い」 「よし、陽翔、行こうか」 「うん。じゃ、拓真、終わったらステージ袖で待ってる」 「了解。いってら〜」  そう言って俺と涼介はドレスに着替えるために一階の被服室に移動した。

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