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 涼介とプラネタリウムの教室に来た。久しぶりのプラネタリウムでわくわくする。もうどのくらい行ってないかな?高校生になってからはあまり行ってない。バイトもあるし、涼介ともなかなか時間が被らなくて。プラネタリウムは一人で行くときもあるけど、子供の頃からの習慣のようなもので涼介と行くことが多い。  中学の頃は俺はバイトなんてなかったから涼介に時間を合わせられたけど、今は週二回か三回バイトに入ってるから、なかなか時間が被らなくなってきた。  だから、文化祭でプラネタリウムをやるところがあると知ったときに絶対に涼介と来たいと思ってた。 「陽翔とプラネタリウム来るのどれくらいぶりだろうな」 「もう随分行ってないよな」 「今度行こう。プラネタリウムは陽翔としか行きたくない」  涼介のその言葉に嬉しくなる。俺も人と行くなら涼介としか行きたくない。 「あ、そろそろ始まる」  いつもの教室の天井が星空に変わり、秋の星たちが映し出される。  秋の星空は寂しいと言われがちだけど、アンドロメダ座、ペガスス座、プレセウス座、カシオペア座、はくちょう座、と言った神話に登場する星座が見られる季節でもある。  綺麗な星空を眺めていると違う世界にスリップしたみたいで日頃の疲れやストレスも飛んでいく。やっぱりプラネタリウムっていいな。でも、いつか星が綺麗にみることのできるところで生で星座を見てみたい。大学生になったら叶うかな? そのときはやっぱり涼介と一緒がいい。  そんなことを考えながら見ていたら、上映はすぐに終ってしまった。 「やっぱり星っていいよな。いつか本物の空で見てみたいな。陽翔と一緒に」  涼介が俺と同じことを考えてくれていたと思うとめちゃくちゃ嬉しい。 「大学生になったらどこか行ってみない? 空気の綺麗なところなら見れるかな?」 「そしたら田舎がいいんじゃないか? 夏の大三角形見に行くか?」 「いいな、それ。お互い忙しいかもしれないけど時間作ろうぜ」  今は互いの時間が合わなくても学校に来れば会える。でも卒業して大学生になれば学校も違うからほんとに会えなくなる。それは寂しいから絶対に嫌だと思う。それを涼介も思ってくれてるんだと思うと嬉しいしかない。   でもそう考えると彼女いない方が時間作りやすいのかな、と思ってしまう。涼介への想いを昇華させるためにも彼女を作った方がいいと思ってるのに、涼介といたいがためにやっぱりやめようかと思ってしまうんじゃダメだよな。そう考えると少し辛い。   「まだ後少し時間あるけどどうする?」 「じゃあ適当に見て回ろうか」 「よし。じゃあそうしよう。陽翔とゆっくりできるのって久しぶりだから楽しい」 「涼介が彼女いるからだろ」 「そうだけど。でもだからこそ陽翔は彼女なんか作るなよ」 「それ、超勝手じゃん。それ言うなら涼介だって彼女いらないじゃんか」 「陽翔は好きな人忘れたくて彼女欲しいのか」 「そうだよ。涼介と一緒」 「でも大学に入ったら俺も彼女とどうなるかわからないからな」  涼介は家から少し時間のかかる大学への進学を希望している。そうしたら、高校生の彼女とは時間を取るのが難しくなるのだろう。  もし涼介が彼女と別れたら? そして俺との時間を優先してくれるようになったら? そしたらどれだけ嬉しいだろう。  なんてことを考えて自己嫌悪に陥る。人の不幸を願っているみたいじゃないか。自分勝手だな、俺って。  そんな考えを振り払いたくて、早く行こうぜ、と歩き出した。

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