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楽しい時間はあっという間に過ぎてしまい、涼介はクラスに戻る時間になった。そういう俺も一度クラスに戻り迷路スタッフをしてから、再度女装コンテストのステージに戻ることになった。
今度は涼介はいないが、拓真が一緒にいてくれた。ステージ袖でスタンバイしていると、結果が出ることに緊張してきた。どうしよう……。
「大丈夫だって。そんな緊張するなよ」
「そうよ。西園寺くんダントツだったもの。しかも化粧ナシで!絶対に優勝するって」
拓真と三枝さんが声を掛けてくれるけど、俺には他の出場者の方が綺麗に見える。もちろん、こんな格好したんだから優勝か準優勝くらいはしたいけど、世の中そんなに甘くない。あー、どうしよう。
「……それでは出場者の皆さん、ステージにどうぞ!」
やたらとテンションの高い司会者の声で、一人ステージへと向かう。あーやばい。足震えてきた。早く結果発表してくれ。それで早くステージ袖に帰してくれ。結果発表してから、優勝者と準優勝者だけステージに出せば良くないか? なんて違う方に思考がいってしまう。
「まずは準優勝から発表します。準優勝は……」
準優勝には選ばれなかった。ということは、やっぱりダメなんじゃん? こんな格好したんだから優勝くらいしないと割にあわないと思ってたけど、優勝は無謀だったか。でも、それくらい思わないとこんなドレス着てステージになんて立てなかった。
「それでは、優勝者の発表です! 優勝に輝いたのは、三年五組、西園寺陽翔さんです!」
え? なんか今、俺の名前が聞こえた気がするけど、気のせいか? え?
「西園寺陽翔さん、前へどうぞ」
西園寺陽翔って俺だよな? えっと、前へって言われてた気がする。 なんだ? なんかわけわからなくなってきた。
とりあえず前へ出るとマイクを向けられる。
「感想をどうぞ!」
感想? いや、よくわかってないから。あ、でも嬉しいかどうかって言われたら嬉しい。ドレス着たかいがある。
「あの……嬉しいです」
他に何か言われた気がするけど、頭が真っ白で何がなんだかよくわからない。ただ、優勝したんだってことだけはわかった。
その後のことはよく覚えてない。ステージ袖に戻ると、その場にしゃがみこんでしまった。
「陽翔、やったな!」
「やっぱり西園寺くん優勝だったでしょー。絶対優勝するって思ったもん」
そう言えば三枝は、初めから優勝するって言ってたな。なんでそんな自信があったのかわからないけど。と、思ってたら三枝が続ける。
「化粧して綺麗になるなんて当たり前でしょ。でも、西園寺くんなら化粧ナシでイケるって思ったんだよね。男の娘っていうけど、本当に可愛くて綺麗な男の娘なんて少ないのよ。でも西園寺くんは可愛い顔してるから」
じゃあ何か? 女顔の可愛い系だからだというのか? 俺のコンプレックスが役に立ったというのか? それはなんだか喜んでいいのか悲しんでいいのかわからない。ただひとつわかってることは、恥ずかしい思いしたかいがある、っていうことだ。優勝したこと涼介に伝えたら喜んでくれるかな? そう思い、早く涼介に伝えたいと思った。
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