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合コンリターンズ1

 文化祭が終わった後の学校は受験一色になった。数日前までは文化祭の準備で盛り上がっていた教室内も教科書と参考書を出して勉強している。  俺はと言えば、前とあまり変わってない。勉強は授業を真面目に聞いてノートを取って、後は家で勉強をする。特に塾には通ってない。塾、という言葉が出たときもあったけど、三年生になったときの面談で、塾に行かなくてもきちんと勉強すれば合格圏内だと言われたので、結局塾には行ってない。推薦入試まで後数日。推薦入試と言っても獣医学は学力試験もあるので、あまり気は抜けないが、それでも今さら焦っても……というのもあり、これまでのペースを崩してはいない。  そして拓真はというと、俺と違って学力試験はないみたいで、面接と小論文だけなのでのんびりしている。 「なぁ、陽翔。推薦入試終わったら合コン行くつもりなんだけど、陽翔どうする?」 「合コンかぁ」  合コン行ったら涼介怒るだろうな。あ、でも涼介は一般入試だから今はそれどこじゃないか。でもなぁ、バレちゃうんだよなぁ。 「香川か」 「うん」  涼介への想いを昇華させたくて合コン行くのに、その合コンに行くと涼介が怒るんだよな。でも、今のままだったら花吐き病だって治らないし。何より、辛い。なんで彼女作ろうとすると怒るんだろう。俺には彼女は必要ないって。入試があるし、女の子は時間を取るだけだって言ってたけど。  確かに彼女できたら、彼女に時間取られるとは思う。受験生である涼介だって彼女に時間を取られている。だからそういうセリフが出てきたんだろうし。でも、涼介だって彼女いるのに俺だけダメっていうのは理不尽だ。 「香川ってさ兄弟いる?」 「妹がいるよ」 「シスコン?」 「普通。なんで?」 「んー。陽翔に対してブラコンみたいなのかな? と思ったりしたんだよね。でないとさー」 「でないと?」 「陽翔のこと好きとしか思えない」  涼介とは幼稚園のときからの付き合いだ。それからは一緒に育ってるような部分もあるから、確かに兄弟みたいなところはあると思う。でも、だからと言って涼介が俺を好きっていうのは絶対にあり得ないと思う。とすると、やっぱりブラコンみたいなのかな。 「そんなことあるわけないじゃん。男同士だよ?」 「そうだけどさ。それでも陽翔は好きじゃん」 「俺は特殊なんだよ」 「見てると、溺愛気味だけどな」 「溺愛って。だから、そんなんじゃないよ」 「いや、十分溺愛だろう。ブラコンで溺愛体質ってことか」    そう。そんなんじゃない。単に仲が良いだけ。 「そうかなぁ。まぁでも、普通の友人関係よりは親密だろ」 「だから、半分は一緒に育ったようなもんだから」  そう、なのかな? わからない。わからないけど、ひとつわかってることは、俺が合コン行ったら怒るだろうな、ということ。でも、涼介を諦めるには、やっぱり彼女作った方がいいと思うんだよな。  涼介だって好きな子忘れようと彼女作ってるんだから、まったく同じなんだけどな。うん、同じ。ってことは行っていいじゃん。彼女作っていいじゃん。怒られたら、好きな人忘れるためだ、って強く言えばいいんだ。 「合コン行く」 「行く? んじゃーさ、今度は大学生のお姉様方ってどうよ? 陽翔可愛いからモテると思うけど」 「可愛いは余計。でも、別に大学生でもいいよ。任せる」 「了解。じゃあ、推薦入試の結果出てからだな。さすがにそれまでは勉強しないと」 「わかった」  大学決まれば、涼介に勉強を理由に反対されることはないからな。怒られる理由はひとつでも少ない方がいい。そのためには勉強頑張って推薦受からなきゃな。

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