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 推薦で合格したら合コンに行こう、ということで決まり、俺は学力試験に備えることにした。  数学、英語に化学基礎か生物基礎のどちらかの合計三科目。おれは化学基礎を選んだ。そして、その三科目に追加して小論文も書かなきゃいけないのでその対策もしなくちゃいけない。   正直、余裕がない。そこで思うのは、前に合コンに行ったときに結梨花ちゃんと付き合わなくて良かった、ということだ。涼介が言ってた通り、彼女に時間を取られていただろう。受験生に彼女はいらないのかもしれない。それでも涼介は彼女と別れてはいないけど。  そんなに好きな子のこと忘れたいのかな? あんな完璧な涼介でも諦めなきゃいけないような高嶺の花なのか? 俺は涼介が欲しいのに。けど、涼介が欲しいのは俺じゃない誰か。  とそこまで考えて気づいた。文化祭で涼介はクラスのカフェが忙しくて、朝、彼女と少しまわって、後は俺とまわっただけだ。他の誰かとまわってはいないはずだ。でも、好きな子に誘って貰ったって言ってたけど、どうしたんだろう。何か用事でダメになったんだろうか。でも、それにしては元気だった。ショックを受けていたようには見えない。いや、そう見せていただけかもしれないけど。  でも、俺は涼介がずっと誰かを好きとは気づかなかったくらいだから、文化祭のときもショックなのを押し殺していたんだろう。そう思うと涼介が可哀想になる。高校生活最後の文化祭だったのに。  そう考えた瞬間、吐き気がして急いでトイレに行くと、クローバーを吐く。私を思って、か。  花吐き病になってから花の種類もだいぶ覚えたし、なんなら花言葉にも詳しくなった。医者は白銀の百合を吐いたら完治の印だって言ってたけど、白百合の花言葉は純潔だ。気持ちが花言葉に連結してるみたいだから、アザレアの方がぴったりなのに、と思っていたりする。アザレアの花言葉は恋の喜びだ。なんて、吐きながら考えたりするあたり花を吐くことに慣れてしまったな、と思う。   まぁ、なんにせよ、俺は勉強を頑張って推薦をもぎ取らないとな。できるだけ一般入試は避けたい。  そして推薦をもぎ取ったら合コンに行く。知ったら涼介は怒るだろうけど、好きな人を忘れるためと言って、推薦もぎ取ったから、と言い訳ができる。  でもほんとになんで涼介はあんなに怒るんだろう。俺には彼女はいらない。今のままでいいってわけがわからない。  拓真はブラコンって言ってたけど、幼馴染みを取られるっていう独占欲なんだろうか。兄弟みたいに育ってるから、お互いがいて当然だし、取られるなんて嫌だっていうことなんだろうか。俺はそう思ったときに涼介が好きだと気づいてしまったから、純粋な幼馴染みの感情というのがイマイチわからないんだけど。  でも、涼介を見ていると普通の友達である拓真とはまた違う言動だから、やっぱり幼馴染みって違うのかもしれない。  なんにしろ推薦もぎ取れば涼介だってそんなに合コンを反対しないかもしれない。仮に反対されたって、合格してるって言えるのは強いよな。  よし、勉強頑張ろう。そして推薦もぎ取ろう。そう思って参考書を開いた。

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