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 推薦が取れたら合コンへ行こう、と拓真と話してからいつも以上に勉強を頑張って推薦入試を受けてきた。 「西園寺」  授業が終わり、帰ろうとしたところで担任に呼び止められる。なんだろう。 「おめでとう。推薦取れたぞ」  推薦、取れたのか? マジか。やった! 「勉強頑張ってたものな。大学行ってからも頑張れよ」 「はいっ!」  やべ。マジ嬉しい。そう思っていると後ろから拓真の声が聞こえてきた。 「陽翔、推薦合格おめでとう」 「ありがと」 「これで合コン行けるな」 「あぁ」  拓真は数日前に推薦合格の連絡が来ていた。だから、俺の推薦合格待ちだった。 「早く帰っておばさんに知らせた方がいいよな」 「それに涼介にも知らせなきゃ」 「じゃ、早く帰れよ」 「うん。じゃ、明日な」  拓真に手を振って教室を出ると、涼介のクラスに急ぐ。まだいたら真っ先に知らせることができる。と思って急いだけど、既に帰った後らしくいなかった。  となると急いで帰って母さんに知らせた後で涼介のとこに行くか、とダッシュで家に帰った。 「あら、おかえり」 「ただいま! 推薦取れた!」 「あら。取れたの。おめでとう。良かったじゃない。勉強頑張ってたものね」 「涼介んとこ行ってくる」 「そうね。早く知らせてあげなさい」 「そうする」  母さんに合格を知らせて、急いで着替えて家を飛び出す。涼介の家はすぐそこだけど、その少しの距離ももどかしくて走る。  涼介の家のインターホンを連打すると、不思議顔の里奈ちゃんが出てくる。 「どうしたの、陽翔くん」 「涼介帰ってる?」 「ううん。まだだよ」 「今日、塾じゃないよね?」 「違うよ。多分、あの女じゃないかな」 「あの女?」 「今の彼女。お兄ちゃんが受験生で大変なのにデートしろってわがまま言ってるんだよ」  そう言うと里奈ちゃんは顔をしかめる。よっぽど嫌いらしい。まぁ、確かに難関大学に一般入試なんだから遊んでいる暇はないはずだ。 「私がいくら言っても別れないから陽翔くんから言って。陽翔くんの言うことなら聞くと思う」  そうかな? 俺が言っても聞かないような気がしなくもないけど。 「俺が言っても聞かない気がするけど言ってみるよ」 「お願い。あ、で用は? お兄ちゃんに伝えるよ」 「あ、そうだ。大学、推薦合格したんだ」 「わー。おめでとう! 獣医さんになるんだよね。すごい!」 「ありがとう」 「帰ってきたら伝えるけど、陽翔くんからもメッセージしておいて。あの女と一緒だと見れないと思うけど」 「そうしとく」  しかし、里奈ちゃんは今の彼女がとことん嫌いらしい。それに関しては苦笑いするしかない。まぁ、受験生にデートせがんでたらそうなるか。俺に言わせれば、それに対して断固拒否しない涼介もどうなのかと思うけど、里奈ちゃんにそれは言えない。 「陽翔くん、家にいる?」 「うん、そのつもりだけど」 「じゃあお兄ちゃん帰ってきたら陽翔くんの家に行くように言うね。まぁ、言わなくても行くと思うけど」  そう言って笑う里奈ちゃんに、そうだといいな、と思う。  里奈ちゃんに伝言を預け、家に帰る途中で涼介に、推薦合格した、とメッセージを入れる。さ、家に帰って思う存分ゲームしよう。合格した開放感を味わいたい。いつもゲームは短時間にしてたけど、合格したらそんなの関係ない。そう思うと足取りも軽くなった。

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