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神社には夜中だというのに沢山の人がいた。寒いのになぁ、なんて他人事のように思ってしまう。
「なぁ、ここ菅原道真じゃないけどいいのか?」
「天満宮はこの近所にはないし、神様だからいいんじゃない? 絵馬書いてお守り買うよ」
そうなんだ。近くに菅原道真を祀った天満宮はないんだ。まぁ、だから俺も推薦前にはここに来たけど。でも、涼介が受験するのは一流大学の経済学部だ。俺なんかとは違う
「陽翔もここに来ただろう?」
「うん。でも涼介なんかとはレベルが違うし」
「大丈夫でしょ」
涼介がそう言うならいいんだけど。
順番がきて、二拝二拍手一拝でお参りをする。その後は涼介は絵馬を買って願い事を書く。大学に受かりますように。
そしてお守りを買うときに、涼介がお財布を出そうとしたところで止める。
「これは俺からのプレゼントな」
ささやかながらプレゼントにしたい。
「陽翔……ありがとう」
「ううん。頑張れよ」
「うん」
お守りを買った後は甘酒で体を温めてから帰路につく。
「陽翔に買って貰ったお守りなら絶対に受かるな」
「俺は神様じゃないからご利益ないけど、応援だけはしてるからさ」
「うん」
お守りに俺の気持ちをプラスした。ま、神様でもない俺の気持ちがプラスされたってご利益がある訳でもないけど、応援料みたいなものだ。
ほんとは好きな子から貰ったらいいんだろうけど、それはできないから俺で許して貰う。でも、すごく嬉しそうにしてたから、良かったとホッとする。
お守りを買ったのは俺で、受け取ったのは涼介なのに、涼介のその表情を見たら、俺の方が気分良くなってしまった。
ほんとに涼介が合格するといいな、とさっきお参りしてきたことと同じことをまた繰り返す。
「お参りしたし、絵馬も書いたし、陽翔にお守りも買って貰ったし受かる気しかしない」
「神様には俺もお願いしたから二人分の願い事な」
「じゃあ余計に落ちることはないな」
「後は涼介が頑張れば大丈夫」
「うん。頑張るよ」
涼介は塾も行ってるし、家でも勉強頑張ってるの知ってるから。だから絶対に受かるって思ってる。
涼介が受からなかったら誰が受かるというのか。俺の好きな涼介は何事にもひたすら頑張るやつだ。神様だってその頑張り見てるだろうから。だから大丈夫って思うんだ。
「俺、陽翔の推薦試験のとき何もしなかったのに」
「いいんだよ、そんなの。涼介と違って一流大学とかじゃないし」
「でも獣医になるのにいいとこなんだろ」
「まぁね。家からも遠くないし、ちょうどいい感じかな」
「でも無事推薦取れて良かったよな。俺も陽翔に続くから」
「うん」
「正月も塾あるのか?」
「塾は四日から。三が日は家で勉強する」
明日からしばらく会えないんだなぁ。でも、涼介には受かって欲しいから邪魔はしない。
受験まで後一ヶ月半。
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