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片想い卒業式1

 二月下旬。  今日は涼介の入学試験の合格発表の日だ。俺は朝からそわそわしていた。あんなに頑張っていたから合格していて欲しいけど、実際に発表を見るまでは落ち着かない。涼介のことだから一番に連絡くれるはずだけど……。そう思って携帯を手放せない。あぁ、ほんとどうなんだろう。いや、あんなに頑張ってたんだ、合格するに決まってる。  そうやって考えていると携帯が鳴る。涼介からだ。 「涼介!」 「陽翔。受かったよ! 合格した!」  合格した。合格したか。やった! 「合格おめでとう」 「ありがとう。陽翔に貰ったお守りのおかげだよ」 「涼介が頑張ったからだよ」 「今から帰るけど、陽翔今どこ?」 「家だよ」 「じゃあ陽翔のとこ行く」 「うん。待ってる」  通話を切って、階下に降りる。母さんに知らせるためだ。 「母さん!」 「どうしたの慌てて」 「涼介、合格したって!」 「合格したの。さすが涼介くんね」 「今から帰ってくるって」 「今日って夕飯どうなのかしら? 用意がなければお寿司でもとるけど」 「夜勤って言ってた気するけど」 「涼介くんに訊いてみてからね。里奈ちゃんもいるし」 「そうだな」  あ! 新しいゲーム出しておこう。受験が終わったら遊ぶ約束してたから。早く帰って来ないかな。  涼介が帰って来るのを漫画を読みながら待っていると、玄関が開く音がして、次いで母さんの声が聞こえる。涼介だ!   「涼介! おめでとう!」 「ありがとう、陽翔」 「今日、特に夕飯用意してないみたいだし、夜勤だって言うから里奈ちゃん呼んでお寿司頼むわよ。合格祝い」 「やった!」 「おばさん。いつもありがとう」 「何言ってるの。涼介くんも里奈ちゃんも子供と変わりないのよ。逆に陽翔もお世話になってるんだし。夕方には里奈ちゃんも来るだろうし、それまで遊んでなさい」 「そうする。涼介、ゲームやろうぜ。言ってた新しいやつ」 「楽しみにしてた」  そう言って俺と涼介は二階にあがる。 「頑張ったな、涼介」 「絶対受かりたかったから。陽翔にもお守り貰ったし。試験日にも持っていったんだよ。で、お守り見たら気持ちも落ち着いて試験受けられた。だから陽翔のおかげだよ」 「何いってるんだよ。涼介が休み返上で勉強頑張ったからじゃん」 「違うよ。陽翔のおかげだよ。ありがとう」 「俺、何もしてないよ」 「そんなことないよ」  と同じことを俺たちは繰り返して、ついには笑ってしまった。 「同じこと繰り返してるな」 「ほんとだな」 「あ、ゲームやろうぜ。これ」 「陽翔はもう結構進んでるだろ」 「まぁね。冬休み、ずっと拓真とやってたから」 「じゃあ追いつかないな」 「俺ももう一つやろうかな? そしたら一緒のレベルじゃん?」 「じゃあ、それでやろうか」 「おう!」  そうして俺はもう一つアカウントを作り、涼介とゲームを楽しんだ。

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