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第3話

 えーーーーっと…… それって疎外感ですか? ワタヌキさん……  僕の目の前の、小麦肌の細マッチョが、急に迷子の子供のように見えた。 「お前さ……体は頑丈なのにメンタルは豆腐なのな」 「どうせ。俺みたいなド阿呆は豆腐の角にあたm……」  迷子のボウヤを、背後からそっと抱き締めて言葉を止めさせた。  うるさい。そういう無駄に自虐的な会話は嫌いだ。  目の前の綺麗な背中に頬が触れる。 「つべこべ言わずにとっとこ漕げ。」 「……はい」  意識して低音の命令形で告げると、綿貫は、らしくないほど小さな声で答える。 「溜め込んでることがあるなら、いい機会だから言え。ちゃんと聞くから」 「……待ち時間が伸びて退屈だった」 「うん。ごめん、ありがとな。それから?」 「高野ムカつく」 「そうか。あとは?」 「そんなことで腹立てて、お前に話してる自分が嫌だ」 「……とりあえず明日から、“メンタル筋”を鍛えろ」 「そんなのあるのか?」 「知るか。無かったら作れ」 「んな! 無茶苦茶言うなぁ」  僕の、見当違いな俺様発言に、たまらず綿貫が吹き出した。  ようやく笑った。  ……高野の話はしない方がいいのか。そうか。

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