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第2話

どんちゃん騒ぎの家の中。 アルコールも手伝って騒がしく煩わしい。 トイレに行くフリをして家から抜け出た。 裏庭に畑がある。 ローファーではなく、スニーカーで来て良かった。 大人達の会話の中から盗んだ情報だけでそちらへと歩みを進める。 茄子やトマト、とうもろこし。 ゴーヤにかぼちゃ。 見えてくる畑には野菜がいっぱいだ。 虫─蚊もいっぱいだけど。 それでも、良い。 漸く1人になれる。 畑の全貌が見えると、ふわっと空気が変わった気がした。 ん…? 奥に紫煙を燻らせる背中が見えた。 あ、やべ 人がいた… あと、どっか1人になれるとこあっかな 大人がいない所が良い。 帰ろうとする背中に声がかかった。 「ん? こんにちは」 無視する訳にもいかない。 振り向き、小さく頭を下げた。 「……こんにちは」 「どうかしたの?」 「あ、用事はなくて…。 その…、家の中、大人ばっかりで居心地悪いから…」 「ははっ。 逃げてきたんだ。 俺もだよ。 居心地悪いよね」 知っている。 大人達が、この人のことを酷い言葉で呼んでいた。 穀潰しだとか、なにをしてるか分からず危ない人だとか。 知らないばあちゃんは、あの人にこっそり指差しながら近付くんじゃないよと言ってきた。 大人達の本意は分からないけど、酷い意味なんだとは分かる。 赤ん坊を連れている家族は近付きすらしない。 法用の最中も隅っこにポツンと座っていた。 席が用意されていない訳じゃない。 食事の膳がない訳でもない。 だけど、明らかに異質扱いだと思った。 そりゃ、居心地悪いよなと思う。 なのに、寂しそうには見えなくて、寧ろ芯がある人なんじゃないかと思ってしまう。 飄々としているからだろうか。 不思議だ。 知らない人なのに。 まるで知っているみたいに思える。 これが既視感ってやつなのだろうか。 「ま、こっち来なよ。 ここ、蚊取り線香もあるし。 効果は分からないけど」 「……じゃあ、少しだけ」 嫌なら他の場所を探せば良いだけ。 そんな簡単な理由で一緒に木陰に入る。 直射日光が当たらないだけで、旋毛が楽になった。

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