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第7話

「久遠くん。 セックス、したことある?」 「な…い…」 「あぁ。 感染症対策であれか。 付き合ってる子は?」 俺は、首を振った。 「1人も? 童貞?」 今度は頭を縦に振る。 「なら、覚えなよ。 教えるから。 セックスの仕方」 ボトムスの中に入れたワイシャツを引き出され、はだけた素肌に大きな手が這った。 男の手なのに、気持ち悪さはない。 同性同士のセックスなんて想像したこともなかった。 同性からそういう目で見られることだってそう。 自分はノーマルだと思って生きてきた。 いや、そんなことすら考えていなかった。 だって、自分が本当は同性が好きだとか、同性も好きだとか考えることなんてないだろ。 当たり前に、自分は普通だと思って生きてきた。 だけど、嫌悪感がない。 寧ろ、もっとと思う。 「抵抗しないんだ。 悪い大人に漬け込まれるよ」 テレピンのにおいに、汗と煙草のにおいが混じる。 クラクラするのはそのせい。 知らないにおいだから。 はじめてのにおいだから。 少しずつ空気は冷えていくのに、身体の熱が冷めない。 奥が火照るように熱を広げている。 「好きな女の子のこと考えてな。 大丈夫。 痛くはしないよ」 「睦月さん、とが…良い」 動きが一瞬止まった。 なにかまずいことでも口にしたか。 不安になり顔を伺った。 まただ。 蛇みたいな目。 作り物みたいな笑顔。 「ベッド行こうか」

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