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第6章(前編)
ヒロと連れ立って、電車に乗り、そこから更に30分くらいかけて知り合いの居なさそうな街でホテルに入る。事前にスマホで情報を調べて、行ったことのあるラブホの系列店を選んだ。清潔感が売りで、一見ラブホっぽくは無い感じの部屋の方が、ヒロには似合うと思ったから。正直、歩道橋を渡って裏の街に帰ればラブホなんていくつもあるが、ヒロとの初めての日は大事にしたかった。ヒロはラブホは初体験らしく、どことなく緊張しているようだ。部屋を選んで、エレベーターで上がっている間も、いつもより険しい顔をしていた。
「ヒロ。」
「なに?」
「顔、怖くなってる。」
「ごめん。初めてで緊張してる。ハヤトは?」
「え?」
「ハヤトは、こういう所慣れてるのか?」
「…内緒。」
「そう。」
内緒も何も、女の子とも男の人とも何度もお世話になっている。どこのラブホにどんな部屋があるか完全に把握しているくらいには、裏の街のラブホに詳しい。ホテル特有の狭い廊下を歩きながら「ヒロのために処女を取っておいても良かったかもなぁ。」なんて思った。あの時は、まさかこんな日が来るなんて想像も出来なかったから。
バタン
扉が閉まって、ヒロと二人っきりになる。ぎゅっと抱きつくと、抱き返された。
「…ホテル来たけど男同士だし、いきなりは無理なんだろ?」
「おれ、ヒロに抱かれたいんだけど、ヒロは?」
「俺はどっちでもいいよ。ハヤトの好きな方で。」
コートを脱いで、真ん中にドンっと置かれたベッドに二人並んで腰掛ける。
「俺が抱かれる側なら、久しぶりだけど、風呂で解せばある程度イけると思う。」
「そ、そうなのか。」
ヒロが俯いてしまう。え?俺、処女じゃないからダメ?捨てられる?!
「な、なんだよ!お互い初めてじゃ無いし、別に経験あったって普通だろ?!」
慌てて明るい声で言ってみるが、ヒロは下を向いたままだ。
「…え?ダメ?俺、初めてじゃないから?」
「違うんだ。その…。」
「え?男が初めてだから、とかそういう事?大丈夫、女の子と一緒だって!」
「…。」
意を決した様に顔を上げたヒロ。その顔は茹でダコみたいに真っ赤になっている。コレって、もしかして…。
「…もしかして、ヒロ、初めてなの…?」
ヒロはコクリと頷く。
「悪かったな。俺だって、早めに捨てたかった。だけど、学生の分際で出来る訳も無いだろ?万が一の時に責任も取れないし。就職するって言ったら振られるし。就職してからは彼女作るタイミングなんて無いし。」
いつもよりだいぶ早口のヒロを見ながら、俺は感動していた。
「…笑いたかったら笑っていいぞ。」
「笑わない。どうしよう。めっっっちゃ嬉しい!!」
「…嬉しい??」
「それって、ヒロの初めてが俺って事だろ?何それ、めちゃくちゃ嬉しい!」
ポカンとしているヒロの頭を抱えて撫で回す。
「ありがと!俺のためにドーテイ取っといてくれて!」
急いで風呂に入って、後ろをほぐす。風呂場にあったローションを仕込んで戻ると、ヒロも裸になってベッドで待っていた。ヒロは本当にいい身体をしている。これまで大柄の男とは何人も付き合ってきたが、ヒロ以上に格好の良い男は居なかった。もしかしたらヒロが好きだから大柄の男に惹かれるのかもしれない。肩幅がしっかりあって、鍛えすぎている感じもない自然な筋肉や骨や筋の感じも堪らない。ぼーっと見惚れて居ると、理想の身体がこっちに歩んでくる。
「大丈夫か?逆上せた?ほら、冷蔵庫に水入ってたから。」
「あ、うん。」
ガウンの上から肩に手を回され、優しくベッドまで連れて行ってくれる。それが下心からの優しさでは無く、本当に心配して優しくしてくれているのだから愛おしくて仕方ない。ベッドに乗り上げ、渡された水を一口飲む。
「あのさ。」
「ん?」
「…穴、ちょっと固くなってたかも。」
「そう。」
ペットボトルを取り上げられると、ゆっくりと押し倒される。
「教えて。俺が解すから。」
「う、うん。」
「脱がせていい?」
「あ、え、ちょ、ちょっと待って!」
「どうした?」
慌てて、体を起こす。どうしたもこうしたも?!なにこの小っ恥ずかしいやつ?!?!
「え、なに?ヒロ、ほんとーに初めて?」
「…。」
「あ、ちが、そういう事じゃ無くて、え?!ちょ!んー?!」
「ハヤト。」
真剣な目で見つめられて、心臓が口から出そう。
「俺だってハヤトとシたかったよ。ちゃんと勉強もした。」
「う、うん。」
「でも、ハヤトの方が知ってると思うから、色々教えて欲しい。…ダメか?」
「ダメじゃ無いです…。」
プシューっと頭から湯気が出ている気がする…。あ、これ、もう無理なやつ。
「自分で脱ぐ?」
「ぅん。じぶんでぬぐ。」
バスローブを脱いで、今度は自分から背中をベッドに預ける。
「顔見ながらでいいのか?後ろ向きの方が楽だって書いてあったけど。」
「ううん。大丈夫。顔見えた方が安心する。」
「そっか。…触っていいか?」
「う、うん。」
ヒロの手が、俺のチンコに触れる。既に半勃ちだったソレがビクッと跳ねてしまう。恐る恐るといった風に、ふんわり優しく握られる。
「ヒロ。」
「っ!あっ、なに?痛かったか?!」
「ふはっ!」
弾けるように顔を上げたヒロが可愛くて吹き出してしまう。俺だけじゃない。ううん、むしろヒロの方が緊張してる。
「大丈夫。俺も同じ男だよ。ヒロが自分でしてるみたいにしてくれたら気持ち良くなるから。」
「そ、そっか。…そうだよな。でも、力加減なんて分かんないだろ。」
「大丈夫。痛かったら言うから。」
「ん。絶対だぞ。」
「うん。ねぇ、キスしよ。」
俺の顔の両脇に手をついたヒロの顔が近づいてくる。唇にそっと唇が触れる。「もっと。」と強請れば、すぐに唇が触れて、今度は舌で舐められる。そっと口を開けば、そろりと舌が入ってきて、舌同士が触れる。軽くヒロの舌を噛むと、それを合図に舌と舌が絡まりだす。そこから後は、二人とも夢中になった。いつの間にか、お互いの頭を抱えるように抱きながら、深く深く口付ける。だらしなくヨダレが溢れて、頬を伝って行った。それを阻むようにズズズっとヒロに吸われて、やっと唇を離す頃には酸欠になっていた。
「はぁはぁはぁはぁ、はぁーっ、長ぇよ。」
「ふぅ。嫌だったか?」
「嫌じゃない。もっかいしよ。今度は下も触って。」
背中を支えられ、ベッドの上に起こされる。ヒロの手が俺の勃起したチンコに触れる。
「おっきくなってる。」
「ヒロもだろ。」
ヒロのチンコを握ると、想像以上にデカい。『これ、入るかな?』と若干の不安が頭をよぎり、『これが入ったら気持ちいいだろうな』とヨダレが出る。キュッと力を入れると、同じようにヒロの手に力が入る。温かくて大きい手のひらが気持ちいい。思わず「ふふっ」と笑うと、ヒロの顔が近づいてきて、再びキスを始める。俺がヒロのを扱くと、同じように扱いてくれる。それが気持ち良すぎて、慌てて手を離した。
「ちょ、ちょっと待って。」
「どうした?気持ち良く無かったか?」
「違う。イキそうになった。」
「1回イク?」
「…それより、後ろ触って欲しい。」
「分かった。」
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