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第28話 春樹※

どうやって使うのか、いまいち分からないまま購入したディルドは、下野と同じくらいのサイズだったので、春樹はまた苦笑いをしている。 それもそうだ。記憶を辿り、下野のペニスと同じサイズのものを自分で探し、選んだのだから間違いない。 ひとり暮らしは無防備になるのか、こんなものまで購入しちゃうんだなと、他人事のように考える。 ディルドの説明書には、使う時はローションを塗って挿入すると書いてある。 ディルドとは、勃起したペニスの形をした、いわゆる大人のおもちゃだ。性行為、オナニーの時に使う物。 使い方は、女性も男性も穴に入れるようだが、春樹は童貞だから、女性の穴はわからない。だけど、男性の穴は自分のことだからわかる。ローションが必要とは、濡らして穴にスムーズに入れるためだ。 でも、これを購入したのは後ろの穴に挿入したいからではなく、あの時の下野を思い出したかったからだ。 下野のTシャツを間違えて持って帰ってきてしまった。 以前は週末に下野の家に遊びに行き、私物を沢山置いていた。下野が関西に引っ越しすると聞き、自分の物を全部引き上げたが、その時、下野のTシャツを一枚間違って持って帰ってきていたようだ。 春樹はその下野のTシャツを、寝る時によく着ている。寂しくてたまらない時は、下野に抱きしめてもらう感覚を思い出すことが出来る。週末を過ごした日々はもう何年も前だが、最近のように鮮明に思い出すことができる。 明日は美桜に誘われたので実家に帰るが、それまで時間はたくさんある。下野のTシャツを着て、ディルドを持ち、春樹はベッドに入った。 下野はよく二人のペニスを合わせて同時に撫で、上下に擦っていた。だから、ディルドを春樹のペニスの上にぴったりと合わせ、あの時と同じことをしてみる。 ゴム樹脂のディルドは冷たい。 熱く滾るような男のペニスとは程遠い。 それでも、下野の大きさや形を思い出すから興奮し、春樹のペニスは勃起している。 ディルドをズルズルと動かすだけで、刺激となり、ビュクッと春樹はすぐに射精した。 「あっ、ああっ、んん…」 ひとり暮らしの部屋に、自分の声が響いてしまい恥ずかしい。だけど、一度火がついた身体は止まらなかった。 ディルドに精子が付いたまま、今度は後ろ手にディルドを持ち、尻の下、足の間から抜き差しをしてみた。 ローション代わりの精子が、ぬるぬるとしている。 下野と最後に会った夜、暗闇の中で股の間にペニスを捩じ込まれた。あの時の快感が忘れられない。 足をぴったりと閉じ、足の隙間に下野は自身の硬くなったペニスを捩じ込んでいた。 下野のペニスは、春樹の裏筋に沿ってゴリゴリと動く。下野が上下に腰を振っているのが真っ暗闇の中わかった。 あの時と同じことをする。 目を瞑れば、下野にされていると錯覚できる。ディルドはぐちゃぐちゃと音を立てて、春樹のペニスの裏筋をゴリゴリと撫でていく。 あの時、下野に加減なんてなかったと思う。されるがままだが、気持ちがよかった。声を抑えることも出来ず、射精する時は声を上げていた。 「…寛人」 好きな男の名を呼びながら、ディルドを足の間に挟み、ペニスに刺激を送っている。 「ああっ…寛人…でちゃう」 自分でディルドを動かすからぎこちなくなってしまう。それでも、下野に抱かれているようで興奮してしまう。 「んんっっ、はあぁっ、ああっ…」 もう一度春樹は射精した。今度はビュッと大量に出たから、大きなサイズの下野のTシャツを汚してしまった。 キスして欲しい。 下野とキスがしたい。 自分から連絡を取ることは出来ない臆病者なくせに、心の中は望みばかりだ。

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