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第39話 下野※

春樹との距離は少しだけ縮まった。 言葉通り少しだけだけど、気持ちはかなり前に向かって進んだと感じる。 それは春樹と朝と夜にメッセージを送り合うことが出来ていたからだ。嬉しいことに、春樹からの返信も毎日ある。 そして、夜に時間が取れれば電話をする時もある。一方的ではなく、相手からの返しもあるのが、昔に近づいたようでかなり嬉しい。 だけど、春樹とはあれ以来会えていない。 下野は今、仕事で関西に戻っていた。急なトラブルがあり対応することになった。だから、東京には少しの間戻れそうにない。物理的に春樹に会えなくなった。 仕事のトラブルについては、営業戦略が頑張っている。ぶつかってきたトラブルを何とか収め、次に繋がるような計画を作り、立て直している。 社長である下野と営業戦略部が打ち合わせを行い、秘書の伊澤のサポートもあって、何とか目処はつくようになった。 今は社内の打ち合わせを終了させ、全員で食事に来ている。酒も入り、少し砕けた会話も挟むようになってきていた。 営業戦略部の数名も下野と一緒に関西に来ており、その中には、あの井上もいた。 「今回は井上さん、頑張ってましたよね!あ〜ん、どうやったら井上さんみたいになれるんだろう。綺麗だし、スタイルいいし、仕事出来るし!それに何でそんなに何でもかんでも、しっかり出来るんですかぁ!」 関西支社の井上の後輩である女性社員が、井上をベタ褒めし始めたのを、笑って聞いていた。 「えーっ?私?ぜんっぜん、しっかりしてないよ?ねっ、この前、何もないところで転びそうだったよね?」 下野の腕に手を置き井上が「ねっ?」と話しかけてきた。やけにフレンドリーだなと思ったが、飲みの席だしと放っておいた。 だけど、転びそうとは何のことだっけ?と考えていると、井上がペラペラと周りに向かい喋り始めていた。 「この前、新しく出来たカフェに行ったんです。その時、なーんにもないところで転びそうになっちゃって!あはは、私、ドジだからぁ。だけど、社長が後ろから駆けつけてきてくれて、助けてくれたんです。あの時、支えてくれなかったらゴロンって転んでましたよね?もう、恥ずかしい」 一瞬、何を話してるんだ?と思ったが、まだ秘書を置く前に、井上が突然、下野がインタビューを受ける場所に現れた時のことを話しているんだとわかった。 「…ああ、あの時か」と、下野が言いかけた時、反対側の隣に座っている伊澤が、物凄く怒った顔をしていたので、ハッとした。 周りに誤解を招くような言い方だったから、伊澤が怒っているようだ。 気がついた時はもう遅く、話は進んでおり、井上と二人でプライベートでカフェ行ったみたいな話になってしまった。 「えっと…ま、今日はさ、とりあえずいっぱい食べて飲んでくれよ!」 話題を変えようとして、皆に飲み物を勧めるが、「井上さんは、しっかり者キャラだけど、意外と天然さんな部分があるんですね」と、周りが言い出し、またその話題に戻ってしまう。 「私、そんな風に見えてる?えーっ?」 井上は、まんざらでもない顔をしている。いやいや、匂わせだっけ?やってんだよなと、心の中で呟くも、まぁ、飲んでいるからいいかと下野は軽く思っていた。 「そうですよ!井上さんは誰とでも仲良くて、仕事も出来てカッコいいじゃないですか。いいなぁ〜」 女性の話はあっちへこっちへと飛ぶ。そして、やたらと井上を褒めるんだなと、女性たちを見渡した。そういえばいつの間にか自分は女性たちに囲まれて座っている。 あれ?と後ろを見渡すと、男性たちは反対側の席に集まり、楽しそうにバカ笑いしていた。こっちの席で男は下野と伊澤のみ。ああ…あっちの席に混ざりたいと、下野は強く願ってしまう。 ヤバっ仕組まれたかもと思ったが、もう遅かったかもしれない。 井上は、下野の隣にぴったりとくっ付き、飲むのが進むにつれボディタッチが多くなっていく。 「私、人見知りだよ?人見知りだけど、社長とだけは話しやすい!社長みたいな人と付き合ったら楽しいだろうなぁ。ねっ」と、井上にストレートに言われる。 それを見ていた伊澤が「たち悪い」とボソッと言っているのが聞こえた。 井上以外の皆に話を振ったり、やんわりとボディタッチを避けていたけど、最終的にはまた井上に主導権を取られるような形になってしまった。 その後トイレに行ったフリをして、何とか男性陣の方に混ざらせてもらった。やっぱり、男同士の方が話が弾む。女性には気配りが必要だから、気をつかってしまう。 だけど「社長と井上さんは仲がいいですよね」なんて声が、男性陣からも上がった。 勘弁してくれよと思っていると、井上がまた同じ席に座ってきていた。物凄くグイグイとくるタイプだ。 だけどスタイルは良いし、人目を引くタイプだから、周りの男性たちは井上が同じ席にいるのは嬉しいらしい。 「社長は恋人いないんですか?」と、更に砕けた会話が多くなり、何となく笑ってそれに答えていた。 「恋人?いないんだよなぁ」と答えると「うっそだぁ」とか「いっぱいいそう」とか、若干失礼な声も上がり、笑ってしまった。 「社長のDNAは残した方がいい!優秀な人の子供は宝じゃん」 「だよなぁ…マジで子供は可愛いですよ。社長は子煩悩になりそうだし」 結婚して家庭がある男性から、そんな声も上がった。結婚や子供を考えていない下野は「おいおい!話が行き過ぎだろ!」と笑いながら答えた。 「じゃあ、社長のタイプは?どんな人?」と聞かれる。 「え?俺?俺かぁ…そうだな、頑張ってる人かな。諦めないで頑張ってる姿にグッとくるかな。それとよく食べる人」 「おおっ!具体的ですね」と、言われる。春樹のことを考えると、スラスラと答えが出てくるからそう答えたのだ。 「んっ!私、料理が得意。私といたらいつも美味しいご飯が食べられるよ」と、井上から忘れた頃にボディタッチを受ける。 「いやっ、俺はさ、」 俺が料理を作って、それを美味しそうに食べてくれる春樹が好きなんだと、心の中で叫びながら、井上のボディタッチをかわしていた。 だけど周りはそれを見て、あれあれ?という顔をし「二人とも、何だか意味深!」「それにお似合いだと思います!」と、口々に言われてしまう。 井上と出来ているという噂が流れてしまうのは困る。焦って伊澤の方を見て助けを求めると、めちゃくちゃ怖い顔をしていた。 その後は、伊澤が常に気にしてくれ、事あるごとに間に入ってくれたお陰で、それ以上は何もなく、宿泊しているホテルまで戻ってこれた。 ただ伊澤には「甘い!もっと距離を取る」と小声で叱咤された。 早く問題収集し東京に戻りたい。東京では大きなプロジェクトを抱えているから、戻ったらまた忙しくはなりそうであるが。 隣にいた井上の気配を流したいため、ホテルに戻りすぐにシャワーを浴びる。 シャワーから出た後すぐにバスローブのまま春樹に連絡を入れた。 『春ちゃんお疲れ様。今日はどうだった?俺は今、ホテルに戻ってきたよ』 メッセージを送るとすぐに返信がきた。 『遅くまで大変だな。お疲れ様。俺の方は特に問題はないよ。変わらない』と書いてあった。 だからまたすぐメッセージを返した。『電話していいか?』と。 『いいよ』という返信があり、嬉しくてすぐ春樹に電話をかけた。 「…もしもし?春ちゃん?」 明日も仕事であるから、少し話をして切り上げるつもりだった。だけど、今日は声が聞きたくてたまらなかったので、電話をしたいと素直に伝えた。 最近、メッセージや電話で話をする時は、ふざけたことを言い合うことも出来るようになっていた。 毎日連絡を取っているので、春樹の方も心を開いてくれているように感じる。 「…じゃあ、遅くにごめんな。また明日メッセージ送るよ」 「ああ、俺は明日、飲み会があるんだ。蓉が幹事の社内の飲み会だから参加するんだけど、陸翔も参加だから面倒みないと」 「そうか…明日は遅いのか。春ちゃんも忙しいんだな」 飲み会と聞いて少しモヤモヤとしてしまう。春樹は以前に比べて、社内のコミュニケーションはよく取っているようだった。 「寛人は今日飲んでたのか?」 「ああ、うん、そう。飲んできた」 飲んでいたかと聞かれたので、そうだと返事をすると春樹は少しの間無言になっていた。 「春ちゃん?どうした?」 「い、いや、何でもない。寛人は飲んでる時は手を繋ぎたがるのを思い出したから。そうだったなぁって、あはは」 笑い声がする電話口で「春ちゃん!」と、大きな声を出してしまった。飲んだら手を繋ぐという二人の間のルールを、春樹は思い出してくれていると思ったからだ。 「あっ、ごめん。大きな声出した。いや、飲んでも手を繋ぐ人はいないから寂しいなって思ってな。ははは」 春樹と手を繋ぎたいと、最大限にアピールしたつもりだ。だが、そんなまわりくどい言い方では、伝わらなかったようだった。春樹に愛だ恋だということは、伝わらないのはわかっている。 春樹を好きだという気持ちは変わらないが、春樹の気持ちは一向にこっちに向くことはないんだろうと下野は思っている。 春樹には、恋愛とは無縁のような感じのところがある。下野との付き合い方は男友達としてしか見ていないようだから、下野が好きだと言ったら驚くだろう。 ぐだぐだと考えながら話をしていたら「そうか、じゃあ早く寝ろよ」と言われ、あっさり電話を切られてしまった。 電話を切ってから目が冴えて寝られなくなった。ホテルの部屋は暗い。外の光は遮断してる。 春樹の声を思い出していると、下半身がムクムクと育ってきているのがわかった。 電話で春樹の声を聞いただけで勃起するなんて、どうかしている。俺は変態なのかと思う時もあるほどだ。 だけど、気持ちは抑えられない。好きな気持ちはどんどん育つ。 春樹を好きだと言って抱きしめたい。次に春樹にキスをする時は、好きだからキスがしたいんだと伝えるつもりだ。もう、カッコつけたりせず、気持ちを誤解されずに伝えたい。それで振られてもいい。そう思っている。 だけど、キスをする時なんか、くるわけがないことも知っている。 下野は真っ暗な部屋で育ちきったペニスを握りしめた。グチグチと竿を上下に扱き始める。春樹のペニスと自分のペニスを合わせた時を思い出している。 自分のゴツゴツとしたペニスとは違い、春樹のペニスはツルツルだった。あれを見ると当時もかなり興奮していたのを思い出す。 春樹を大切にしたい気持ちもあれば、たまに身体をこれでもかと、貪りつきたい欲求が出てきてしまう。 春樹の身体中を舐め回し、自分だけの証をつけたいと思うことがある。 それに、春樹の中にこの育って腹に付くほど大きくなっているペニスを入れたい欲望が強くなる。 下野は、右手でペニスを掴み、扱く手を止め腰を振り始めた。春樹の中に出したい。欲望が抑えられなくなってきている。 グチャグチャと先走りの音が聞こえる。自分の精子は量が多いと思うが、先走りもダラダラと流れ出て量が多い。春樹と二人でペニスを合わせていた時は、自分の先走りが春樹のペニスに流れていくのを見ると興奮した。 このグチャグチャという音が、春樹の中から聞こえてくるのを想像してしまう。 後ろから春樹の孔に入れてみたい。こんなことを考えているなんて知られたら、幻滅されて二度と会えなくなるだろう。 だけど、春樹の身体を想像すると、興奮してしまう。想像することをやめられない。春樹の尻を掴みぐちゃぐちゃにしてしまいたい。 右手でだけでは収まらないほど、ペニスが大きくなっている。春樹の中に射精するのを想像し、下野は腰を最大に振る。 春樹を抑えつけて奥の方に射精したい。こんな不埒なことを考えてるとは、知られたくないが腰も手も止まらない。 「…はっ、くっ…うっ…」 最後は両手の中に大量の精子を出した。この熱は一度では収まりそうになかった。 仕方がないので下野はまたバスルームに入り、まだ勃起しているペニスを扱き始めた。

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