49 / 63
第49話 下野※
強烈過ぎて思考が止まってしまった。
春樹が『好きだ』と言っている。
その相手は俺である。更には肉体関係を持ちたいと思っているとも言っていた。
言われた後、怪訝な顔をしたと思う。仕方ないだろ?そんなこと言われるわけはないんだ。俺の頭の中にはそんな言葉はない、聞き間違いだと、下野は繰り返し考えていた。
春樹の口から『ニクタイカンケイ』って言葉が出るなんて有り得ないんだから。
「ホットケーキ食べるだろ?」という春樹の声で思考が戻ってきた。だけど、それもほんの少しだけだ。ホットケーキか…くらいの戻りだ。春樹からその手のことで誘われてるなんて、考えられなかった。
春樹の家に初めて入った。入ってからは自制が効かなくなったと思う。それは春樹からキスをされたからだ。春樹からキスをされるなんて、そんなことも考えたことなければ、夢にも思わない。
だけど身体が反応してしまった。その後は、自分の気持ちと感情がコントロール出来ず、春樹に思いきりぶつかっていってしまった。思いきり…身体ごと。
うわごとのように春樹に好きだと言い、春樹の身体中を撫でまわし、あの頃のように二人のペニスを合わせてぐちゃぐちゃにしていた。
「っ、やぁっ、で、でる」
「…っ、あっ、うっ」
春樹の柔らかい尻と足の隙間に自分の凶暴なペニスをねじ込み、擬似セックスのようなことをした。
凶暴なペニスとは自分で自覚は大いにある。興奮しすぎて、ペニスがガチガチに硬く大きくなっていたから。
いつもひとりでオナニーをしている時よりひとまわり大きくなっている。自分の硬くなり自由が効かないペニスを、春樹の柔らかい尻の間に捩じ込むのが、いやらしく見えた。
二人分の精子がシーツにビシャっと飛び散ったのはわかったが、気遣うことも出来ずそのまま後ろから抱きしめた。
「春ちゃん…大丈夫?」
「だ、だ、大丈夫じゃない!」
射精した後なのに、まだ春樹は興奮しているようだった。
「大丈夫じゃない?あっ、ごめん、」
下野のペニスは勃起したまま収まらないでいる。だから嫌がられているんだと思い、抱きしめている手を緩め離れようとした。
「違う、足りないんだ!だから大丈夫じゃないんだ!」
離れようとした時、手を春樹に掴まれ戻された。
「た、足りない?」
「そうだ。俺が何年、お前への想いと付き合ってきたと思ってる。一度じゃ足りない…それに、最後までしていないじゃないか」
「最後って…だってそんなのさ、」
またわけのわからないことを春樹は言い出す。最後までしてないと言い、春樹はベッドの下から小さなボックスを引っ張り上げている。下野の言葉は途中で遮られた。
「…これで俺は我慢してきたんだ。お前が…寛人が責任を取るべきだと思う。寛人にも、俺と同じ気持ちがあるなら、中途半端なことをせずに…」
ボックスの中には男性器の形をしたものが転がっていた。それとオレンジ色の蓋のローションも一緒だ。
「春ちゃん…これは、誰の?」
「俺のだ!当たり前だろ?ここは俺の家だ。だからこれは俺のだ」
バイブってやつだろうか。初めて見る。ローションも一緒にあるってことは、春樹はこれをどうしていたというのだろうと、下野はバイブとローションを手に取り眺めていた。
「バイブ…って、どうやって…なにが、」
「違うっ!それじゃない、それは使わなくていいんだ。こっちを使うだろ」
春樹は下野が手に取り眺めていたバイブを取り上げて、乱暴にボックスに投げ入れた。もう片方の下野の手に残ったローションを指差して「こっちを使う」と言う。
「……えぇーっ!嘘だろ?マジで?春ちゃん、本当か?こっち?」
マジか、こっちかと、春樹をガン見して問いただしてしまう。
頭に血がやっと巡ってきたようで、思考が回転し始めた。『こっちを使う』と言い、ローションを使えと春樹は言う。それはそういうことだろう。春樹はセックスがしたいということだ。
下野はローションを持ったまま、自分の下半身を見た。下半身はまだギンギンに勃起している。
これをここに塗り、男同士のセックスをしてもいいのだろうか。男とはやったことはないがセックスは知っている。だけど春樹は童貞だから知っているのだろうか。いや、もしかしたらもう童貞ではないかもしれない。ん?いつだ?童貞じゃなくなったのは俺の知らない時なのか?なんだっ!それはっ!…と、一瞬で色んなことを下野は考えてしまった。
「寛人?嫌なのか?やっぱり、それは難しいか…」
ローションを手に固まっている下野を見て、春樹は不安になったようだった。
「いやいやいや、春ちゃん!見てみろよ!これで俺が嫌なわけないだろ?こんなガチガチになってるだろ?」
左手で自分の大きすぎるペニスを掴み、春樹に見せた。一度イッているが、勃起は収まらず、ガチガチのままになっている。
ペニスを見せられた春樹は、目を見開いて下野のペニスを凝視していた。びっくりしたような顔をしている。
だけど、そんな春樹を見て下野は決意した。春樹の気持ちを聞き、動揺してしまいさっきまで思考が止まっていた。だけど今はもうわかる。自分の気持ちに従う時だ。
思考は戻り、行動を起こす時である。
そうだとわかった。
「春ちゃん…俺は春ちゃんが好きだよ」
そう単純なこと。
春樹が好きだ。好きなんだと繰り返し叫ぶように伝える。
下野はローションの蓋を開けて、中身を手のひらで受け止めようとする。それは透明でドロッとした液体だった。だけど見た目よりサラッとしている。
大きくなり過ぎているペニスに塗っていくと、ギュチュウっとローションが重なる音がする。
どれくらい塗ればいいかわからないが、ペニスから滴り落ちるくらい塗ってみた。残りのローションはまだ手のひらに残っている。そのまま下野は、春樹の尻の間に手を這わせた。
触っていいものだろうかと頭で考えているが、行動は伴わず躊躇せずに春樹の尻の孔を指の腹で撫でている。春樹の尻だ、孔だと思うとペニスはビクビク勝手に動き、更にでかく、いきり立ってしまう。
「ひ、寛人…」
「ごめん…怖いか?」
「ち、違う、寛人のでそこを広げてくれ」
そこを広げろと春樹は言う。いつも想像をしていた春樹の孔だ。そこに入れるのを想像してひとりでオナニーを繰り返してきた。そんな妄想が実現になるとは思えなかった。
「いや、いきなりそれは…」
「大丈夫だから!」
大丈夫だからと春樹が力強く言うので指の腹で孔を撫でるのをやめ、ローションでテカテカになっている自身のペニスを掴み、春樹の尻と孔に擦り付けた。
下野がペニスをグニグニと動かし当てていると、春樹がモゾモゾと尻を動かしてくる。そのまま春樹の孔にペニスを押し付け、先端を少し減り込ませていく。
「んんむっ、んっっ…」
「い、痛い?」
ペニスの先端が春樹の孔にプクッと入った時、春樹が声を上げたから思わず腰を引いてしまった。
「痛くない、大丈夫だから…もっとお前を奥で感じたいんだ。奥まで入れてくれ」
四つん這いになり尻を高く上げたまま、顔だけ振り向いて、春樹はそう下野に言った。
「…痛かったら、言えよ?」
ローションを春樹の尻の間に継ぎ足して、下野はペニスを握り、孔の奥に突き刺していった。
グリグリと腰を動かしながら、時間をかけて少しずつ入れていき、ペニスの根元までズップリと入った時、気持ちがよくて腰を左右に動かしたら、春樹が高い声を上げて射精していた。
「やっ、やぁぁぁぁ…っ、んん」
「ごめん…キツイか?全部入ったけど…」
「ちが、違う…気持ちいい…寛人、またでちゃった…」
ああ、もう、腰が動いてしまう。
春樹は射精する時、昔から『でちゃう』と口にする。下野はひとりでオナニーしていた時はそれをよく思い出していた。イクと言うより、春樹の口から『でちゃう』と言われると、すごく興奮してしまう。
「春ちゃん、動いてもいい?大丈夫?ちょっともたなくなってきた。俺、すぐイキそう…」
「う…うん。こすって…」
春樹の声で「こすって」と言われるとペニスが膨張し、精子が爆発してしまった。グッと二回腰を強く入れ込んだ後、グチャッと引き抜きシーツに向かって下野は射精した。四つん這いの春樹の足にもかかってしまった。
「なんで、中で出さない!」
「いや、だって春ちゃん?中に出すのは良くないだろ?」
「お前はわかってない!お前は俺を好きだと言った。俺だってお前が…寛人が好きなんだ。好きな人のことはずっと考えている。好きな人としたいことだって俺にはたくさんあるんだ」
「えっ?だ、?なに?」
「だから!お前を…好きな人の全てが欲しい。欲張りになってしまうけど、そう思っているんだ。だから中で出して欲しい」
「もうっ、春ちゃん!知らないぞ!嫌な時は俺を突き飛ばせよ」
二人の衝動が刺激してくるようだ。
「こっち向いて…春ちゃん。俺のこと、抱きしめてくれる?」
下野は、コロンと向きを変えさせて春樹の唇にキスをした。そのまま腰を深く入れるとまた春樹は身体を仰け反らしていた。
ともだちにシェアしよう!