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nanny 第6話 春樹※
「だ…から、もう出来ない…っば」
かぶりつくようなキスをされるから、途切れ途切れに言葉を発する。
「大丈夫だよ。春…好きだ」
「も…う、ち、が…う」
大丈夫かって!自分で決めることなんだって!と、言いたかったが言葉にならず。
手際が良い下野の手は止まらない。流されてしまうと思うが、セックス中の下野はいつもより倍増しでカッコいいし…それに、気持ちいいし…
明日から三連休となる。美桜の子供たちが泊まりに来ることになっている。美桜の入院以来、双子は頻繁に泊まりに来ていた。
なので、今日の夜はしつこいくらいに下野から求められている。明日から当分の間セックスは出来ないからだとわかっている。それはいつものこと。
だけど、今日はいつもとちょっと違う。こう何度も求められると、体力的に追いつかず、明日は大丈夫かなと思ってしまう。
なんでこうなったんだっけ…
今日は、会社帰りに下野と待ち合わせをした。久しぶりに外で食事しようかと言う下野の提案に喜んで乗った。
食事をした場所はバーシャミである。閉店していたバーシャミが再オープンした。
フィエロという高級リストランテを、下野プロデュースの銀座ビル最上階にオープンしたシェフのジロウは、イタリアンバルであるバーシャミも再びオープンさせていた。
そこは、下野と春樹の二人で何度も通っていた思い出がある場所だ。元あった場所と同じ所、二人の自宅からすぐ近くにバーシャミは再オープンしていた。
下野と二人で店に入ると、シェフであるジロウと、あの時、春樹を助けてくれたフィエロのウエイターのリロンが出迎えてくれた。
「おおっ!仲良くなったようで!」と、ジロウは、春樹と下野を交互に見ながら、両手を広げ笑顔で挨拶をしてくれた。
下野は「やっと俺の気持ちを受け入れてくれた!」と、張り切って左手薬指の指輪を二人に見せていたのでびっくりした。
下野の堂々と宣言した態度が少し恥ずかしかったけど、指輪を見たジロウとリロンは「おおっ!」と、二人同時に驚きの声を上げて「おめでとうございます」と祝福してくれた。
男同士とか、そんなの関係なく下野と春樹が恋人同士になったことを祝福してくれる二人を春樹は嬉しく思った。
その後リロンは「良かった!本当によかったですよ」と、春樹にだけ声をかけてくれた。久しぶりに会えた大きな味方は、相変わらず頼もしく見える。
だから「あの時は本当にありがとうございました。とても心強かったです」と、春樹はやっとリロンにフィエロでのお礼を言うことが出来た。
あの時、あなたがいてくれたおかげで、素直になれて強くなれましたって。
そこまではよかった…
食事が進むに連れて、安心したのか何なのかわからないが、春樹がちょっと下野に甘えてしまったことがあった。
久しぶりにバーシャミでのデートだし、ジロウとリロンが祝福してくれたしで、春樹も嬉しくなっていたからか、昔話をしてしまった。
「昔ここで寛人にデキアイってどんな漢字だっけ?って、聞いたら俺の手のひらに『溺愛』って、指で漢字を書いて教えてくれたよな」
「…覚えてる。あの時、俺はすごくドキドキしてたんだ」
と、下野も覚えているようで、答えながらテーブルの上で手を握られた。
「俺もドキドキしてた」と笑いながら伝え、握られた手にキュッと力を入れた。
「確か、こうやって書いたよな…」と、あの時と同じように、下野は撫でるように指を滑らし、春樹の手のひらに『溺愛』と書いていく。
「溺れる愛だろ?溺愛なんて言葉すごいよな。うーん、でもやっぱり…こうやってる間もドキドキする。寛人はあの頃と同じでカッコいい」
春樹はドキドキしたから照れ笑いをしながらそう伝えた。本当にあの頃と同じで下野はカッコいい。いや、あの頃以上だなと思っているから、言葉がひとりでポロポロ漏れていく。
「心が溺れるほど、愛するってことだぞ。愛してるよ、春ちゃん」
見つめられながらそう言われた。だから春樹も、はにかみながら返事をした。
「俺も…愛してるよ、寛人」
そしたら下野は真顔になり、急に家に帰ろうと言い始めた。
食事は終わっていたし、帰るのはいいが、急は急である。とにかくバタバタと支払いを終えて、早く帰ろう!と下野は春樹を急がせた。
で…今である。
「…春?何考えてる?あんまり違うこと考えてると、またヤキモチ焼くぞ?」
「…っ、んんむ、だ、か…ら、っん」
腰を奥深くに入れられながら、キスをされる。それに、力強く抱きしめるから挿入が深くなり、奥の出っ張りを下野のペニスでグリグリと刺激されてまた射精しそうだ。
今日はもう何回かイカされている。相変わらず、射精する時は『でちゃう』と言わされてるし…
「そんな可愛い顔して…」
目を開けて、上から覆い被さる下野の顔を見るとニヤッと笑いながらも、気持ちよさそうな顔をしている。
見つめられながら腰を振る速度も速くされる。そんないやらしい姿を見ると、胸がドキドキとして、お腹の奥がキュッと熱くなり、また射精しそうになってしまう。
「や、や、ああっん…やぁぁ。ひ、ろと…でちゃ、う。んんっ、」
「ん?出ちゃうか?」
ちゃんと言わないと何度もされるのは、学習済みである。春樹は『でちゃう』と口にした。だけど、今日の下野はしつこい。ちゃんと口に出して言っても、何度も求めてくる。
それにキスの嵐が今日は一段と強く、髪にも顔にも身体にもだ。明日は双子が来るから、身体にキスの跡がつくのは避けたいのに。
キスマークが付いていると、双子は心配する。『はるぅ、たい?たい?』と痛いか?と聞かれてしまう。
「こらっ、春。また違うこと考えてるな?また最初からするぞ?」
腰の動きを止めた下野は、グリグリと腰を左右に揺らし、春樹の奥の壁を擦り上げる。下野のペニスは大きく重い。だから春樹の腹の奥深くを擦ると、かなりの重圧がかかることになる。
最初の頃は苦しかったけど、今ではその重みがないと少し物足りなくなっている。
だからなのかしれないが、最近は抱き合うのに慣れてきたので、セックスが激しくなってきていた。下野の巨根で奥深くまで差し込められると、春樹はすぐに絶頂に登ってしまうが、激しく巨根で揺さぶられないと、気持ちよく射精が出来ないでいる。
いつのまにか自分の身体も変えられてしまっているようで、ちょっと恥ずかしいけど、下野に奥深くまで腰を押し付けて欲しいと、春樹からお願いしている。
だけど今はその絶頂は既に超えていて、何をされても射精しそうだと伝えてるのに、ワザと知らんぷりされている。
「ひろ、と?奥にびゅって出して?」
「…えっ?」
ちょっとズルいが最終手段しかない。ちょっといやらしい言葉を使って、早くイッてもらおう。春樹はそう咄嗟に考え、下野を下から見つめて伝えた。
だって、こんなに長く何度も求められたらたまらないからっ!身体が壊れるっつうの!何度も放たれた下野の精液が後ろから流れて出てきてる!と、春樹も必死である。
「寛人のが…欲しい。もっと奥にぐーって強く入れて?はぁ…気持ちいい…」
「は、春!」
最終手段は口に出して想いを伝えること。二人のルールのひとつでもある。下野が春樹の言葉に弱いことは知っている。
興奮した下野は叩きつけるような腰使いをしている。ぐちゃぐちゃという音と、二人の息遣いがベッドルームに響いている。
「ひ、ろと…ああんっ、でちゃう」
「ああ…気持ちいい。春、でちゃうとこ見せて?自分で扱いてもいいぜ」
「やだ…恥ずかしい、、寛人やって?でちゃうとこ…見せるから、」
春樹の甘える言葉を聞き、ふんむーっと更に鼻息が荒くなった下野のラストスパートが始まる。大きなペニスも一段と膨らんでいる。その巨根と呼ばれるもので気持ちいい場所を抉られる。
「ひゃっ、ああ…もう、だ、め。寛人?出して?やああっ、でちゃ、う、」
「ああ、俺も…奥に出すから、春、」
言葉にならない声を上げて春樹は射精した。少し遅れて下野も春樹の奥に精子を叩きつけている。射精しながらも、腰を何度も強く打つ下野の姿がいやらしい。
「…大丈夫か?」
ペニスを奥に入れたまま下野に抱きしめられる。
「抜いて」と声をかけると「え…」と小さく抵抗する声が聞こえて笑い出しそうになった。あれだけやっててまだやりたいのかと思うと、笑ってしまう。
「や、や…もう。寛人のが出てきてる。溢れてきちゃった。えへへ、恥ずかしい」
ペニスを抜かれると、急に栓を抜かれたようで中に放っていたものが、コポコポと流れ出したような気がした。
「春ちゃん!だから…もう!」
「えっ?なに?」
「そうやって、すぐにデレるからっ!バーシャミでもそうだったから、俺は抑えられないよ?見ろよ!またこんなになってきちゃったから」
下野は、ベットの上で膝立ちし下半身を指差している。見ると、また上を向き始めたペニスがビクビクと動いていた。
「いや、デレてないし…」
「いや!デレてる」
春ちゃん!と呼ばれまた覆い被さられる。
「ちょ、ちょっと!もう無理!」
溺愛って字の如く、愛に溺れるのかな。
心が溺れるほど愛するってこと、教えてくれた人に今日も抱きしめられる。
end
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