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第3話

 ボロアパートのワンルームの洗面所兼脱衣所に男二人。 「じゃあ、洋服……脱がすね?」  金髪の男が眼鏡の男の服を脱がそうと上着に手をかける。眼鏡の男は真っ赤な顔で金髪にされるがまま、突っ立っていた。 (リョウタさんの脱がせ方、……なんかエロくね?)  実際、ただ脱がすのではなく、早瀬諒太は深海俊哉の上着を脱がすのにわざと時間をかけて、眼をジッと見たり、脱がすのを焦らしてみたりして、自分を意識してもらうように、ねっとりとした指使いで付かず離れず、脱がしつつ。 (深海さんの身体、細くて白いや)  上着のトレーナーを身体から剥がそうとした時。 「ぃてっ……」  深海の眼鏡がトレーナーを脱がすのに邪魔してしまっていた。 「あっ、ふーや眼鏡……」 「ごめんね、今取るから」  さり気なく右手で眼鏡を外し洗面台の上に置く。  その単純な行為がとても美しくて、早瀬はつい見惚れてしまっていた。 (なに今の。めっちゃカッコよ……!)  眼鏡がなくなっても深海の下まつ毛の長さは健在で。むしろ目が大きくなったようにも見える。 (やっぱこの人、めちゃめちゃにカッコいいんじゃん)  眼鏡がなくなって視力が落ちたのだろう、深海は先ほどよりも早瀬をじっと覗き込む回数が一段と増えていた。 (眼鏡ないと、やっぱちょっとボヤけるな。リョウタさんの顔見れないのなんかヤだな)  その何気ない一挙一動に、早瀬はドキドキしてしまい困惑する。理由は解ってる、視力が低下してる故の行動だと。頭の中では理解してるのに。 「そんなに見られると……なんか、恥ずかしい……」  早瀬の顔は真っ赤だ。 「えっ、──あっ、ごめん!俺、視力悪くてつい……!!」 「いえっその。いいんですけど……、俺の方こそ意識し過ぎちゃったみたいで、なんかすみません」  顔を真っ赤に恥じらう早瀬諒太はとても官能的で。 (なんでこの人、こんなにエロいんだろ?)  深海俊哉も早瀬の一挙一動にドギマギしているのであった。 「俺もその。服、脱ぎますね」  早瀬は自分の上着に手をかけてゆっくりと焦らすように剥いでいく。  その光景はまるで一種のストリップショーのようで。深海の視線は早瀬に釘付けになっていく。  上着。  シャツ。  ジーンズ。  靴下。  全てから解き放たれた早瀬諒太の裸体は、深海俊哉にとってとても眩しく、美しい存在に見えた。  程よい筋肉で構成されながらも、女性のような肉付きも併せ持つ官能的な肉体は、深海を興奮させるのには充分な逸材で。 (この人、本当に。綺麗だ……) 「じゃあ。ふーやの残りも、脱がすね」 「えっ、……ぁ、ぃや、おれは自分で──…!」 「それって、俺で勃ってくれてるってこと?」 「う…、うん。──だって、リョウタさんエロいんだもん」  その言葉に、早瀬は少しだけホッとする。 「ふふ、よかった。でも俺、ふーやのズボン脱がしたいなぁ」  上目遣いでおねだりされる。 (か、可愛い……) 「わ、分かった。分かったから、もう好きにして下さい…」  なんだか恥ずかしくなって、つい両手で顔を覆ってしまう。そんな深海を見て、早瀬はとても愛おしく思えるのだった。 「ふーやって、カッコいいのに可愛いんだね」 「え、俺カッコいいなんて言われた事ないよ?」 「そうなの?」 「うん。リョウタさんが初めてだよ?俺どっちかってーと三枚目路線でしょ」  フッと苦笑する姿でさえもさり気ないカッコ良さで。 (そんなこと全然ないのに……)  早瀬はずっとドキドキしっ放しだった。  深海の下半身をまとったスウェットパンツと下着を脱がしていく。 (腰、ほっそ……)  深海自身は既に固くなっていて、少し上を向いていた。 (深海さんが、俺で反応してくれてる)  なんだかすごく嬉しくて。今すぐにでもフェラをしてあげたい気持ちをグッと押し込んで、早瀬は深海を全裸にすることに成功した。    ——実は店側のルールとして、衛生面の懸念があるため客の身体を洗ってからでないと、舐める行為をしてはいけないという決まりがある。 (もうちょっとの我慢……) (俺、これからどうなるんだろ……?)  お互いに生唾を飲み込む音がして。    互いが意識し合っているのが嫌が応にもバレてしまって。  目線が。  互いを捉えて離せない。  心臓の音まで聞こえるんじゃないかと思えるほどに二人の鼓動は高まっていた。 (ヤバい、俺。すげえキスしたい)  早瀬が己の欲と戦っていると。 「お風呂、──はいろっか。……リョウタさん」  突然の深海からの誘いに心臓がドキドキしっ放しで。 「……うん……はいる──」  早瀬はただただ、真っ赤な顔で。ゆっくりと頷くことしか出来なくなっていた。

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